
油は体に悪い、というイメージをくつがえして体にいいオイルと話題になった亜麻仁油。
認知症の予防からコレステロール値の改善まで幅広い効果をもつといわれる亜麻仁油ですが、その原料が亜麻という植物の種である、という話はあまり知られていないかもしれません。
体にいいものだからこそ、素材がどんなものか気になりますよね。この記事では亜麻仁油の元である亜麻がどんな植物なのか、そして亜麻仁油の優れた効果についてご紹介いたします。
亜麻仁油の原料の亜麻という植物
ここでは亜麻仁油の元となる植物、亜麻について解説していきます。
実は有名な歌にも出てくる「亜麻色」の由来は、今回ご紹介する植物の亜麻からきています。衣類などの原料でもある亜麻を紡ぐと、黄色がかった薄茶色の繊維ができあがります。これを栗毛の形容詞として用いるようになりました。そして繊維にならない種子を絞ると、亜麻仁油が抽出できるのです。
亜麻はリネンの原料でもある一年草
亜麻はアマ科の一年草です。茎は細く、夏には青紫(もしくは白色)のきれいな花を咲かせます。人類最古の繊維と称されるほどに歴史は古く、古代から中東やユーラシア大陸などでの栽培がさかんでした。現在では各大陸の涼しく穏やかな気候の地域が主産地となっており、収穫期は花を咲かせる7〜8月です。
茎の繊維はリネン製品となり、高価な衣類やテーブルクロスの素材になります。
亜麻仁油を採るための亜麻は、本来の収穫期から1〜2週間ほど遅れて収穫します。すっかり成熟した亜麻の種子を丹念につぶして油のみをとりだせば亜麻仁油の完成です。
ちなみに亜麻仁油は食用だけではなく、ものづくりの現場でも使われています。ペンキや印刷インクの原料にする、木製品の仕上げに沸騰させたものを塗るなど、さまざまな用途があるようです。
日本における亜麻の栽培
日本での亜麻の栽培は他大陸と比べるとおそく、本格的な栽培は明治時代の北海道で始まったとされています。
当時の主流だった綿の栽培に不向きな寒冷地は亜麻の生育にはむしろちょうどよく、北海道のほかに長野県でも栽培がおこなわれました。
戦争が始まると国家主導で麻生産が奨励され、一時期はたくさんの亜麻が育てられました。しかし1950年ごろからは生産量が減少し、日本での亜麻栽培は衰退していきます。しかし2000年に北海道の有志が、亜麻の栽培復活をかかげて活動を開始。現在では北海道当別町の亜麻公社が中心となり、食用種子の利用を目的とする「北海道亜麻ルネサンスプロジェクト」が進行しています。
亜麻仁油の成分と効能
亜麻仁油にかぎらず、この世の脂質は脂肪酸という成分からできています。この脂肪酸にはさまざまな種類があり、どんな脂肪酸がどれだけ含まれているかで油の性質が決定するといってもいいでしょう。
亜麻仁油といえば「オメガ3脂肪酸」がその健康効果から有名ですが、他にもいくつかの脂肪酸を含んでいます。ここでは亜麻仁油を構成する原料としての脂肪酸をいくつかご紹介いたします。
亜麻仁油に含まれる成分�@:パルチミン酸
多くの油に含まれている飽和脂肪酸のひとつです。食べすぎると体内にたまって悪玉コレステロールとなってしまうため、よくないイメージを持たれがちな脂肪酸です。しかし、食品ではなく化粧品としては評価が高い成分でもあります。
パルミチン酸の適度な摂取は体内のビタミンAを安定化させます。
これがお肌のターンオーバーを整え、美肌効果を発揮するのです。そのため、パルミチン酸は化粧品のオイルなどによく使われています。
亜麻仁油に含まれる成分その1:オレイン酸
植物性油だけでなく、牛肉や豚肉などの動物性油にも多く含まれている脂肪酸です。オレイン酸の効果でとくに注目されているものは血中コレステロールのコントロールです。
動脈硬化や心疾患の原因である悪玉コレステロールの増加を抑制し、善玉コレステロールの量は維持しようとする働きがあります。
この効能をうまく活用すれば、生活習慣病の改善や予防に大きな効果を発揮すると考えていいでしょう。ただし食べすぎると健康への影響があるとの報告もあるため、あくまで適量を意識することが重要です。
亜麻仁油に含まれる成分その2:リノール酸
リノール酸は安い植物油にも含まれている身近な脂肪酸です。安くて身近とはいえ、うまく使えば優れた効果を発揮してくれます。
さきほどとりあげたオレイン酸と同様、適量のリノール酸を摂りつづけることで悪玉コレステロールの増加を食い止めてくれると考えられています。
生活習慣病が気になる方こそ積極的に選ぶべき脂肪酸でしょう。ただし、摂りすぎるとアレルギーの発症やがんのリスクが高まるといった声もあります。
亜麻仁油の成分で最注目のオメガ3脂肪酸の効果
亜麻仁油に含まれるオメガ3脂肪酸は「食べて健康になる必須脂肪酸」として注目を集めました。必須脂肪酸の「必須」とは、「体内で造ることができないため、かならず食物から摂取しなくてはならない」という意味があります。オメガ3脂肪酸は欠乏すると脱毛や免疫不全といった体調不良を引き起こす一方、適切に摂取すれば、すばらしい効果を体にもたらしてくれます。
認知症にいい
私たちが物事を考えている脳とは、じつは60%程度が油だという話はご存じでしょうか。脳の基礎ともいうべき油に気を遣うことで、脳の機能障害である認知症を予防できる可能性があるとされています。アトピーやアレルギーにも有効です。
オメガ3脂肪酸にもいくつか種類があり、亜麻仁油のそれは植物由来のαリノレン酸とも呼ばれます。このαリノレン酸が体内にとりこまれると代謝してDHAになります。このDHAが脳神経の機能を維持し、脳を活性化してくれるのです。
アトピーやアレルギーに有効
世の人々を困らせるアトピーやアレルギー。その原因のひとつに先ほど解説したリノール酸が考えられます。リノール酸は植物油に多く含まれているため、日常生活で簡単に摂取できる必須脂肪酸です。必須とはいえ、摂りすぎたリノール酸は体内で炎症物質に変わる性質を持ち、アトピーやアレルギーの原因となってしまいます。オメガ3脂肪酸には、リノール酸が炎症物質へ変換しようとする動きを止める効果があります。
亜麻仁油の適切な摂取により、アトピーやアレルギーを抑えられるかもしれません。
血中や脂肪やコレステロールを下げる
亜麻仁油などの植物性油に含まれるαリノレン酸を8人の成人男性に摂取させたところ、血中のコレステロールを下げる効果が確認できた、という趣旨の論文が1991年の米国医師会雑誌に掲載されました。
亜麻仁油を摂ることで悪い油を洗い流し、血管や血液をきれいな状態に保ちやすくなります。
悪玉コレステロールや血中の脂肪を減らすことで、健康な体を作っていきましょう。
まとめ
以上、亜麻仁油の原料である亜麻についてと、亜麻仁油に含まれる脂肪酸についてご紹介いたしました。茎の繊維は衣類の素材となり、種は食用にも工業にも使える亜麻仁油となる亜麻は、まさに捨てるところがない植物といえるのではないでしょうか。とくに亜麻の種からできる亜麻仁油の健康効果はすばらしいものばかりでした。
そして、そんな亜麻を現在の日本で栽培している地域は北海道だけです。この活動が広まらずひっそり終わってしまえば、日本産の亜麻、そして亜麻仁油は姿を消してしまうかもしれません。これからは「亜麻仁油は健康にいい」だけでなく、その原料である亜麻にも少しだけ目を向けてみてはいかがでしょうか。