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北海道で亜麻栽培が行われているところ

亜麻仁油や亜麻の種子、リネン生地の原料となるのが亜麻の植物です。亜麻の植物とはアマ科の一年草で、その栽培は古くから行われています。もちろん私たちの暮らす日本でも栽培され、古くは江戸時代から種子を薬として使用されてきました。繊維の原料としての栽培は明治から昭和にかけて北海道で広く生産されたといいます。 今回は亜麻が北海道で栽培されるその理由と、現在も栽培されている地域の話、イベントなどのご紹介をします。

北海道の亜麻の産地

戦後、北海道での亜麻栽培は衰退し一度は途絶えたのですが、北海道石狩郡当別町では再び亜麻の栽培を復興させています。というのも日本であれば亜麻の栽培に適しているのは北海道のみともされ、さらには近年の健康ブームで亜麻仁油も需要も高い。そこで地域活性化の取り組みとして、この歴史ある植物亜麻の栽培を復活させたいという思いから現在に至っています。

北海道の亜麻栽培の一大産地:当別町

衰退していった亜麻栽培を2001年より再開させた石狩郡当別町。繊維として活用できるというところから北海道の亜麻栽培は明治期に開始されました。戦時中は繊維の原料として生産を推し進められていた亜麻ですが、終戦後は手軽な化学繊維が普及、天然繊維である亜麻栽培は衰退していきます。そして昭和40年代には亜麻の植物は北海道から姿を消してしまいます。北海道から長くその姿を消していた亜麻は、栽培方法から確立する必要があり、生産者の方は大変な苦労をされたそうです。十年を超える長い期間をかけて農薬を使わず育てるという試験栽培を行い、技術を築いてきたといいます。

2001年、亜麻栽培が衰退してから約40年という月日を経て、北海道当別町で亜麻栽培が復活しました。

当別町以外で亜麻が栽培されている地域

当別町以外にも亜麻を栽培している地域もあります。

2004年に札幌市に有限会社亜麻公社が設立され、札幌市、空知管内月形町、新十津川町、檜山管内厚沢部町といった地域で主に農家の方が栽培委託を請け負い、栽培をしています。

この有限会社亜麻公社と亜麻生産組合が連携して栽培方法を一から築き上げました。約40年ぶりに亜麻栽培が復活することが出来たのは生産者の熱い思いと協力関係があったからなのです。

北海道で亜麻が栽培される理由

亜麻の原産地は中央アジアの乾燥地帯。現在の亜麻の最大生産国はロシアで生産量は約67万トン、次がカナダで57万トン、カザフスタンが56万トンと続きます。年々亜麻の需要が高まっている背景もあり、多くの国が栽培し生産量も上がっています。さて、そんな亜麻ですが、なぜ乾燥地帯であるのかと言えば亜麻は乾燥に強いと点と、さらには高温に弱く暑さで枯れてしまうという特徴があるからです。北海道で亜麻が栽培される理由はこの亜麻の特徴にあります。ここでは北海道と亜麻の関係、適した気候についてお伝えします。

北海道と亜麻の関わり

明治期の北海道開拓時代、1871年にトーマス・アンチセル氏が亜麻生産の提案者といわれています。

アンチセル氏の提案を受けた当時のロシア公使・榎本武揚氏によって亜麻から繊維をとる技術を導入し、生産を開始。1890年には北海道製麻株式会社が設立され、その後は道内各地に次々と亜麻工場が建設されていきました。

右肩上がりで成長した亜麻生産。1921年には亜麻工場の数はなんと合計85か所もあったとされます。働き手は屯田兵の妻など、女性も多くいたそうです。北海道内で普及していった亜麻栽培でしたが、戦後、敗戦により亜麻の軍需もなくなったことに加え、手軽な化学繊維の台頭により亜麻栽培は急速に衰退していきました。そしてついに昭和40年代に道内での栽培が終了。亜麻の栽培は一旦ここで途絶えることとなります。

参考:日本で亜麻に携わる方々〜亜麻編〜

亜麻栽培に適した気候

亜麻の栽培は原産国が中央アジアの乾燥地であることから、元々乾燥に強い性質を持ち、そのため頻繁な水やりも必要がありません。

ですから日本でいえば、北海道などの寒冷地が栽培場所に向いており、実際に世界の栽培地を見れば札幌市よりも高緯度地方になっています。

また、亜麻は同じ土地で連作することで収穫量が下がってしまい、品質の低下を招いてしまうため、6〜7年の輪作を行うことが必要です。それ以外は丈夫な植物ですので、土の質は問いません。しかし花を楽しみために育てるのなら肥沃な土の方が良いとされています。種まきは4月〜5月半ばまで、暑さに弱いということもあり8月中までには収穫を終えます。

北海道で亜麻の花を楽しむ

亜麻はフサフサした細い茎とその上に小さな青い花を沢山咲かせます。そしてその花が散ると5室2個ずつの種が入った実を結びます。種取り用の亜麻の場合は種を撒いてから約120日で実をつけますので茎が黄色くなって鞘が茶色くなる頃がおすすめです。それ以外にも亜麻は花を楽しむことができます。青く小さな花がいっぱいに咲いて揺れる姿はとても可愛く心癒されます。亜麻の開花期間は2〜3週間と楽しめますが、一方で亜麻の花は大変儚いことでも知られます。以下では亜麻の花についてと、地域活性化のために開催されている亜麻まつりについてお話したいと思います。

亜麻の花に関して

亜麻は4〜5月の間に種を撒くと2ヶ月ほどで小さく青い花を咲かせます。亜麻の花は開花期間として、2〜3週間は可憐な花を楽しむことが出来るのですが、1つの花の命が短いことで有名です。

実は亜麻の花は朝日を浴びながら午前中に花を咲かせたら、午後には散ってしまう。これが亜麻の花が儚いとされる所以なのです。一日しか咲くことがない貴重な花だからこそ、より一層美しく見えます。もしご自分で育てる場合、花を長く楽しみたいのなら追肥を行ってみると良いでしょう。

当別町で行なわれる亜麻まつり

亜麻の一大産地である石狩郡当別町。この町では亜麻の花が見ごろを迎える時期(6月下旬〜7月上旬)に合わせて『北海道亜麻まつり』が開催されます。長きに渡り栽培方法の研究を行っていた農業者の苦労が実り、札幌をはじめ近郊より多くの方が当別町に訪れるイベントとなっています。イベントの内容は亜麻に関する展示や当別町内の農産物の販売、亜麻商品の販売、亜麻の実で使った食品を扱う飲食ブースなど様々な企画や出店がされています。またそれ以外にも亜麻繊維の採取や糸紡ぎの実演、『亜麻色の髪の乙女』を題材とした歌唱コンクールも実施。亜麻畑の美しい景色を見ながらの楽しいイベントです。

先述した通り、亜麻の花は早朝に咲いて午後には散ってしまうので、亜麻まつりも早い時間から始まり、昼過ぎは終わってしまいます。お出掛けの際は、亜麻の花が見ることが出来る時間帯がおすすめです。

所在地   北海道石狩郡当別町東裏2796-1

場所   旧東裏小学校問い合わせ 当別町観光協会TEL:0133-23-3073 亜麻の里TEL:0800-900-4149

まとめ

亜麻は昔は北海道で広く生産されていました。戦時中は繊維の原料として大変重宝された亜麻も終戦後は化学繊維の普及に伴って衰退していき、ついに昭和40年代に姿を消してしまいます。現在、亜麻の栽培は一部地域で地域活性化的な文脈も伴い、復興の兆しがあります。 古くからの産業であった亜麻、地域名にも名を残す亜麻を北海道でその歴史を紡ぐために今も努力している人がいます。リネンや亜麻仁油は生活の中で目にすることが多い商品となりましたが、その国内での生産や歴史について、少しでも知っていただけると幸いです。

参考:北海道での亜麻栽培の歴史