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亜麻について〜植物としての亜麻、リネン、亜麻仁油まで徹底解説〜

有名な歌のタイトルにもなった"亜麻色"や、昨今注目を集めている健康食材"亜麻仁油"、極上の質感で多くのファンを持つ"リネン"など、亜麻に関わるものは身の回りにたくさん存在しています。 では、亜麻とは実際どういったものなのでしょうか?亜麻についての歴史や特徴、使われ方などを解説していきます。

亜麻はどんな植物?

まずは、植物としての亜麻の基本情報についてご紹介しましょう。 亜麻の読み方は「あま」で、学名はLinum Usitatissimum、英名はFlax(フラックス)です。また他に、ヌメゴマ(滑胡麻)、一年亜麻、アカゴマといった異称があります。 原産地は、中央アジアの乾燥した土地、カフカス地方から中東にかけての一帯と言われています。 250種ほどが世界に広く分布するアマ科、アマ属の草本で、一年以内に生長・開花・結実して、種子を残して枯死する一年生植物(一年草)です。

亜麻の花はどんな花?

では次は、亜麻の花にフォーカスしてみましょう。

花の色

亜麻の花の色は薄紫色や淡い青色です。花径は約2cm程度の大きさですが、最盛期には亜麻の畑が一面薄紫色に染まり、ネモフィラの色を思わせるような花畑は見る人の心を癒してくれます。

咲く季節

亜麻は種を撒いてから2カ月程で花が咲きますが、花が見られる期間は2〜3週間ほど、見頃は6月下旬〜7月中旬にかけての初夏の季節です。 また亜麻の花は、早朝、朝日を浴びながら開き、早ければ午前中10時過ぎに萎え始め、午後の陽が昇りきる前には散ってしまうという特徴があります。一日しか咲くことのない儚い花なのです。

実際に見られる場所

日本で主に栽培されている北海道で見ることができます。特におススメは、北海道での亜麻栽培の復活の地である石狩郡当別町で7月に開催される「北海道亜麻まつり」です。 亜麻の花の開花時間に合わせて、例年7:00〜13:30頃という時間で開催されていますので、貴重な亜麻の花の美しさを見に足を運んでみてはいかがでしょうか。

染料としての利用

亜麻の花は、美しい青色を活かし、染料としても使われています。生地や、生地を作成する前の糸の染色に使われ、スカーフなどの商品があります。

亜麻の花言葉と誕生花

儚さと美しさで癒してくれる亜麻の花。続いて花言葉や誕生花についてご紹介します。

亜麻の花言葉

そもそも花言葉の歴史は古く、花束に伝えたい気持ちを込め、相手に贈り、受け取った相手はその意味を読み取り、また花束で返すという、「セラム」という中世アラビアの風習が起源とされています。この花に言葉を込めるという考えが風習が、ヨーロッパに伝わり、流行り出したと言われています。 19世紀の初頭、日本語で「花の言葉」を意味する「Le Langage des Fleurs」というタイトルの本が出版され、大ヒットしました。これをきっかけに、花言葉を愛用する文化が根付き、現在の花言葉のイメージが確立されたようです。ただ、様々な国の神話や宗教、風土に由来した花言葉は数多く存在します。花言葉という言葉が生まれるよりも遥か昔から、人々は花に気持ちを込めてきたのかもしれません。 そして亜麻の花言葉は「あなたの親切に感謝します」です。他にも「感謝」や「単純」、「あなたの親切が身にしみる」といった花言葉がつけられています。 また宿根亜麻の花言葉は「ご親切にありがとう」です。宿根亜麻は、観賞用として栽培されることが多く、種子や繊維を活用する亜麻が1年のうちにで咲いて枯れる一年草なのに対して、冬は枯れても春にまた同じ株から芽吹き、花を咲かせる宿根草です。 このように亜麻には、相手に対しての感謝の意が込められています。亜麻の花は儚く、花束のプレゼントとしては難しいかもしませんが、ありがとうの気持ちを込めて贈る花としてぴったりですね。

誕生花としての亜麻

続いて誕生花としての亜麻についてです。 誕生花は、1年間の365日それぞれに、その日の花が割り振られています。365種類の花が1日ごとに割り振られているのではなく、数日に割り振られている花が多くあります。どの日にどの花が割り振られているかは、風習や伝承、開花時期によってまちまちですが、誕生日プレゼントとして贈る花を選ぶ場合などにヒントになりますね。 誕生花という考え方がいつどこで生まれたのかは諸説あり、はっきりしたことはわかっていません。現在は、古代のギリシャやローマの宗教観が発端となっているという説が有力です。 その頃のギリシャやローマでは、時間という目に見えないものも含め、全てのものに神が宿っていると信じられていました。しかし神は姿がその見えず、声も聞こえないため、その代わり、自然の植物に神からのメッセージが込められていると考えられるようになったと言われています。神が宿っている時間と、神の意が込められている花。この2つの信仰から、それぞれの月日に神からのメッセージが込められた花を割り振るという誕生花の概念が生まれたのです。 亜麻には、5/3、6/1、6/3の3日が誕生花として割り振られています。花言葉でご紹介した宿根亜麻は、5/7、6/7の2日です。これらの日には、亜麻の花を誕生日の贈り物にしたり、リネン製品などの亜麻から作られたものをプレゼントしても良いですね。

亜麻色について

亜麻と言えば、亜麻色という言葉をご存知の方も多いのではないでしょうか。ここからは、亜麻色についてご紹介していきます。

どんな色?

亜麻色という言葉は聞いたことがあっても、すぐにはどんな色か想像できないかもしれません。亜麻色は、亜麻の糸を紡いだ色のことを指す、黄色がかった淡い褐色です。 淡い褐色の中でも特に淡く、薄い栗色とも言えるような、ナチュラルで曖昧な色合いです。その天然色の風合いが優しい印象を与えます。 日本でも「亜麻色の髪の乙女」(ドビュッシーの前奏曲)が有名ですが、毛髪の色を表わす言葉として知られています。「亜麻色の髪の乙女」をイメージする挿絵で、明るい金髪の乙女が描かれていることが多いためか、金髪の一種と思われていることが多いのですが、亜麻色は金髪の色ではなく、より自然な色見なのです。

亜麻色の起源は?

亜麻色という言葉は、一見日本に古くからある色見という印象ですが、明治以降に使われるようになった比較的新しい色名です。亜麻の英訳はflax(フラックス)ですが、これを日本語に訳したものが亜麻色のようです。 「亜麻色の髪の乙女」を作曲したドビュッシーがフランスの作曲家であり、原題に亜麻色が使われていることもあり、起源はフランスと考えられています。しかしフランスでは、亜麻色の髪は金髪の一種に分類されています。フランスには亜麻を指すlinという色がありますが、非常に明るいブロンドと訳されるのです。 1920年代に、少年のような服装や髪型でまとめた女性のファッションであるギャルソンヌが流行しました。そのギャルソンヌを象徴したような個性的な女性歌手の髪が、亜麻色の髪と呼ばれていたようです。彼女の肖像画は、淡い金髪で描かれています。 その頃のフランスは、女性の社会進出が始まっている時代でした。そんな激動の時代の中、優しさや安らぎを求め、「亜麻色の髪」が美しい情景を表現する言葉として用いられたのかもしれません。

「天色(あまいろ)」との違い

亜麻色と読み方が同じ色で、「天色(あまいろ)」がありますが、亜麻色と天色は全く違う色見や意味を持ちます。 天色はその字の通り、空にまつわる色や言葉を指します。「あまいろ」と読むことが一般的ですが、澄み渡った晴天の空のような、鮮やかな青い色を指します。この場合、「あめいろ」と読むこともあります。他に、天色を「そらいろ」と読む場合は、空色と同じ色の表現となり、「あまいろ」「あめいろ」よりも明るく、薄い紫を含んだ青い色を指します。また色の表現とは異なり、天色を「てんしょく」と読む場合には、空模様や天候を表現する言葉となります。 いずれの場合も、亜麻色と天色では、その意味は全く違うものになりますね。

亜麻と大麻の違い

亜麻とよく似た言葉として大麻があります。どちらも同じ麻として認識される事が多いですが、それぞれに違う個性があります。どういった違いがあるのかを見ていきましょう。

それぞれの特徴や生産地

亜麻について

亜麻はここまでご紹介してきた通り、アマ科の一年草です。中央アジアが原産で、世界ではヨーロッパを中心に、日本では主に北海道で生産されています。 産業用の生産だけでなく、園芸用としても栽培されていて、北海道では家庭でのガーデニングや公園、街路樹としてなど、よく目にすることができるポピュラーな植物です。 亜麻の茎からはリネンと呼ばれる繊維が作られ、種子からは亜麻仁油と呼ばれる油が作られます。亜麻仁油は健康食としても有名ですが、油絵や塗料としても活用されています。

大麻について

では、対して大麻はどんな植物なのでしょう。 大麻はアサ科の植物で一年生の草本です。中央アジアが原産地と考えられていて、主にアジアを中心に生産されてきました。人類が栽培した最初の植物のひとつとも考えられているようです。日本語では大麻「たいま」と呼ばれ、麻が別名とされています。 大麻に含まれる約60種の成分には薬理作用があり、日本では非合法として処罰されることは有名ですね。ただ紀元前から用いられてきたというその歴史は古く、多くの国々で規制薬物であるものの、他の多くの国では嗜好品として合法とされています。 国際上、大麻には害毒を起こす成分が含まれていることから制限され、生産や所持に関しても麻薬の条約により規制が求められています。しかし一方では、2016年より科学的証拠の見直しも進められています。医療利用するための研究も進められているため、今後の使い方は変わってくるかもしれませんね。 ただリネンと同様に、ヘンプと呼ばれる麻から作られる繊維も有名です。麻には大麻以外も繊維素材として使われる様々な種類がありますが、日本で昔から使われてきたのは大麻から作られるヘンプです。しめ縄や、大麻(おおぬき)と呼ばれる神社でお祓いの際に使われる道具、神前に捧げる衣などがヘンプから作られ、神前に手向ける折に古くから使われてきました。 麻の他の種類と区別するために、ヘンプが早く大きく成長することから、「大」をつけて「大麻」という言葉になったとされています。

それぞれの生地と着心地

どちらも繊維の原材料となることがわかりましたが、生地としてや、その着心地などはどんな違いがあるのでしょう。

亜麻-リネンについて

リネンは繊維が細いため、リネン生地は通気性の良い、着心地抜群の天然素材として有名です。しなやかで細く、光沢を持つその特徴から、「月光で織られた生地」と呼ばれているようです。 またリネンには、汚れが落ちやすく、洗濯に強い特徴もあります。洗濯の回数を重ねるほど生地の柔らかが増し、色の白さが鮮明になっていきます。リネンのシャツなどを着たことがある方はご存知でしょうが、さらっとしていて軽く、天然素材の中でもしなやかな着心地です。通気性良いので汗をかいてもベタつかず、洗濯にも強いので肌着や普段着に向いています。また保温性にも優れているので、夏は涼しく、冬は温かく着ることができます。

大麻-ヘンプについて

ヘンプは繊維のコシが強くハリがあり、耐久性に優れた頑丈さがあります。頑丈で、リネン同様涼しい生地ですが、リネンとは違いゴワゴワしていると感じる人もいる着心地です。肌が敏感でデリケートな人は、肌着などの直接触れる使い方は避けた方が良いかもしれませんね。 しかしヘンプは、90%以上の紫外線の遮断率を誇り、紫外線対策に効果的です。ヘンプ100%の生地を肌着として身に着けることで、日焼け止めなどを塗らなくても、しっかり紫外線対策になります。 また抗菌性が高いため、菌の繁殖や臭いを防いでくれます。シーツや枕カバーなど、毎日使う、清潔に保ちたいものに向いた生地と言えますね。そしてコシとハリの強さから、型崩れしにくく、バッグや帽子などの形を保ちたい製品の素材としても向いています。

亜麻の栽培について

亜麻は身近で私達の生活に役立つ存在ということがわかりましたが、では実際にどこでどのように背栽培されているのでしょう。

栽培に適している土地は

亜麻は暑さに弱く、寒さと乾燥に強い植物です。そのため、亜麻の原産地は中央アジアの乾燥した土地とご紹介しましたが、現在では寒冷地で盛んに栽培されています。世界の栽培地を見てみると、北海道札幌市より高緯度の地域で多く栽培されています。 また亜麻は、生育力が強いことも特徴の1つとしてあります。暑い地域は栽培に向いていませんが、亜麻を育てる土はあまり問わないため、比較的育てやすい植物です。

栽培方法について

では実際に亜麻はどのように栽培するのでしょうか。 亜麻の種はおおよそ4月から、遅くとも5月の半ばまでには撒きます。水はけの良い畑が向いていて、畑でもプランターでも育てることができます。耕す土の深さが浅いと丈が伸びた時に倒れてしまうかもしれないので、土は15cm以上耕しておきます。あまり深く撒いても芽がでにくくなりますし、撒く間隔が狭すぎても成長しづらいので、1cm程度の深さ、2cm程度の間隔が目安です。撒いたら上から土を被せましょう。 種蒔き後は、基本的に水やりは必要ありません。ただ乾燥に強い特徴はあるものの、あまりに雨が降らず、土がひび割れてカラカラの場合は水やりをしてください。一般的な花を育てる場合と同じくらいの種類、量の肥料は与えましょう。その時の気候にもよりますが、だいたい種を撒いた3〜10日後に芽が出てきて、それから本葉が出てきます。種は5月半ば以降に撒いても発芽し、花は咲きますが、育ちが悪く、背丈が低くなりがちです。 芽が出てからは約1ヵ月半かけてどんどん成長し、約1m程の高さになります。種を撒いてから2ヵ月半ほど経つ頃には、花が咲き始めます。亜麻の花は日の出と共に咲き、昼を過ぎるころには散ってしまう儚い花。花を長く楽しみたい場合は、花が咲き始めた頃に追肥をしましょう。 リネンにする繊維用の場合、夏の間、8月末ぐらいまでに根元から茎を抜き取ります。目安としては、緑色の実がたくさんついた頃です。抜き取り後は、種を取り、気温が高いうちに乾燥させ、繊維を取り出していきます。 種用の亜麻の場合は、鞘が茶色く、茎は黄色くなる頃が目安です。花が咲いた後は枯れますが、人の小指くらいの大きさの鞘ができ、1つの鞘に10個程度の種ができます。乾燥させて保存しておくことで、翌年にまた撒くことができます。

栽培が盛んな地域

まずは世界で見てみましょう。 世界で一番亜麻が生産されているのはフランスです。2019年更新のGlobal Noteの「世界の亜麻生産量・国別ランキング」によると、1,600種類以上の国際統計の結果、フランスは約60万トンの生産量を誇ります。フランスに次ぐベルギーは約7万トンなので、抜きんでた生産量ですね。 フランス国内で見ても北に位置する、ルマンディー、カレーやフランドル地方が主な生産地です。こういった北フランスは、緯度が高いわりに気候が穏やかで、四季に恵まれています。チーズやワイン、小麦などの特産品が有名なように、フランスは世界でも代表的な農業国ですが、亜麻もまた盛んに栽培されているのです。 次に日本ではどうでしょうか。 亜麻は寒冷地を好むため、冷涼な気候の北海道が日本でほぼ唯一の生産地となっています。人も夏は避暑目的で北海道に赴くことがありますが、そんな気候は亜麻にも好ましく、のびのびと成長することができるのです。

北海道での亜麻の歴史

日本では北海道が唯一の亜麻栽培の地ですが、北海道での栽培も、時代と共に変化してきました。ここからは、北海道と亜麻の繋がりについてご紹介していきます。

栽培が始まったきっかけ

一番はじめに亜麻の栽培が始まったのは、北海道開拓時代の19世紀、明治時代です。榎本武楊がロシアから亜麻の種子を送ったことが最初のきっかけと言われています。榎本武楊は明治維新の中心人物の一人で、ロシアへ公使として赴いていました。これは1871年に、北海道開拓使のトーマス・アンチセルが栽培を提言したことによるものでした。ロシア公使であった榎本氏が、亜麻から繊維を取る技術を導入し、北海道での栽培が始まったのです。

栽培の最盛期

それ以来、亜麻生産は右肩上がりで成長し、1890年に北海道製麻株式会社が設立されました。その後、道内の各地に次々と亜麻工場が建設されていき、軍事産業がメインであった当時の時代背景もあり、第一次世界大戦の特需が1920年に訪れ、1921年には85か所もの工場があったとされています。屯田兵の妻など、女性も働き手として活躍していたようです。 第一次世界〜第二次世界対戦の1914〜1945年の間、亜麻の栽培面積も右肩上がりで増えていきました。第二次世界大戦で麻の需要が拡大され、1945年にピークとなります。その頃は十勝地方を中心に、道内で約5万ヘクタールの作付け面積であったとされています。これはゴルフ場で例えると約600箇所分にもなります。亜麻栽培がいかに盛んだったかが伺えますね。 亜麻工場の周りは、亜麻ビジネスのおかげで活気づき、病院や旅館、劇場が立ち並ぶ町になっていきました。

栽培の衰退

変化が起きたのは昭和40年代です。敗戦によりメインの需要であった軍事用のニーズがなくなりました。同時に、天然繊維よりも大量に生産することができる化学繊維が普及し始めたことから、亜麻栽培は次第に衰退していきました。1967年には終焉を迎え、日本から亜麻畑がなくなりました。 そうして亜麻事業が道内から姿を消しましたが、各所に亜麻の生産を由来としている地名が残されています。代表的なものが、札幌市内の麻生です。麻生の亜麻工場は1891年から稼働していましたが、事業の終焉に伴い閉鎖、その後は住宅団地として開発されました。当時の工場長が新たな地名の相談をうけたところ、麻の字を残したいと提案し、札幌市麻生町となりました。 麻生町では今でも亜麻が栽培され、その花の美しさを楽しむことができます。町には「亜麻の畑」と書かれた説明板が存在し、「我国、亜麻産業発祥の地」と記されています。亜麻栽培の歴史を残したいという先人の想いが汲み取れますね。

復活に向けた取り組み

長く姿を消してきた亜麻栽培ですが、約40年ぶりに復活を目指すプロジェクトが結成されました。 2001年、株式会社北海道技術コンサルタントの起業推進室にて、亜麻の試験栽培が開始されます。そこで亜麻商品の模索、研究を重ねるうちに、亜麻仁油が健康や美容に効果的とわかってきました。本格的な亜麻事業の開始のため、「北海道にふたたび亜麻を」を合言葉に、2004年に有限会社亜麻公社が設立。2005年、かつての北海道での亜麻の花が咲き乱れる風景を取り戻したいとの想いで、「亜麻ルネサンスプロジェクト」の取り組みが始まりました。 こうして、当別町をはじめとした道内の各地で亜麻の栽培が復活され、2006年には約9ヘクタールの作付面積となりました。2007年には有限会社大塚農業の社長が中心となって、10戸の農家で当別町亜麻生産組合が発足。40年近く栽培されていなかったため、はじめは虫の異常発生や台風被害など、厳しい状況もたくさんあったようです。栽培技術の蓄積もなく、栽培の復活は簡単ではありませんでした。しかし満開の亜麻畑の美しい風景や、たわわに実った黄金の種子など、多くの喜びに支えられて、現在に至ります。

現在

現在、亜麻畑は札幌市を中心に月形町や新十津川町など、各地に広がっています。中出も最も有名なのは、亜麻公社の拠点ででもある当別町です。当別町は亜麻栽培の聖地とも言える場所で、札幌市の中心地から20〜30kmほどにあります。 毎年7月には「亜麻まつり」が開催され、畑一面に咲き誇る亜麻の花を愛でることができます。亜麻の花は夜明けから昼過ぎまでしか咲かないため、開催時間は例年朝7時〜午後1時半。亜麻の花の美しさを目で楽しむだけでなく、亜麻の歴史の展示や採繊体験など、亜麻に親しむこともできます。他にも、亜麻製品をはじめとした地域の特産の販売や、ご当地グルメの飲食ブース、あの有名な「亜麻色の髪の乙女」の歌コンクールなど、様々な催しが展開されています。初夏の風物詩を見ようと毎年多くの人が訪れる人気のイベント、興味のある方は是非足を運んでみてください。

実際に北海道で亜麻を作る人の想い

約40年ぶりに復活してから、まだ20年にも満たない亜麻栽培。比較的新しい農業とも言える亜麻栽培は、農家の方々の試行錯誤が続けられています。 亜麻栽培の大変なところは、収穫量がとにかく安定しない点だと栄木敏文さん(当別町・栄木ファーム)は言います。はじめは順調に育っていたのに、最終的な収穫が優れなかった年もあるとのことです。栽培を始めた当初は、作り方も収穫方法もわからなかったそうで、一度終焉してしまった栽培を復活させるのは、やはり大変な苦労が伴いますね。 大塚慎太郎さん(当別町・大塚農場)は、収穫を安定させるため、種蒔きの時季をずらしています。通常、亜麻は4月下旬から種蒔きを行いますが、その年の天候の影響でスケジュールが狂っても取り戻せるよう、早めに種蒔きをしているとのこと。蒔く種が多すぎると全体の質が落ちやすいため、蒔く量をあえて減らすという試みも行ったそうです。 このように、亜麻の栽培にはまだこれと決まったやり方がありません。種蒔き時期の他にも、肥料の量や時期、除草の方法など、それぞれの農家が作戦を立てて栽培に取り組んでいます。栽培プランを毎年変える農家の方もいます。亜麻を楽しみにしているお客様のため、栽培に携わる方々はこのように日々取り組まれているのです。

リネンについて

日頃から馴染み深い方も多いと思いますが、亜麻の茎から採取できる繊維を加工して、リネンが作られます。ここからはリネンについて深堀していきましょう。

亜麻からリネンになるまでのプロセス

亜麻は7月に花開き、その後実をつけます。そして7月末から8月にかけて刈り取られ、リネンへの加工が始まります。どのように加工されるのか、日本でのやり方をご紹介します。 まずはレッティングという浸水させる作業です。刈り取られて農家から来た亜麻を水に浸します。亜麻を発酵させることで、茎の中の遷移だけを取り出すことができるようになります。発酵で茎の表面の固い皮などの糸には要らない部分をバクテリアが分解してくれるのです。緑色だった亜麻は、このレッティングの間に亜麻色へと変化していきます。 この浸水させる方法は、発酵精錬とも呼ばれます。精錬という言葉は、純度を高めるために不純物を取り除くという意味ですが、発酵精錬は昔ながらの手法の1つで、自然な化学反応のみで行われます。薬品を使う必要もなく、コストも低く抑えられる点が利点ですね。 レッティングが終わった亜麻は天日で十分に乾かした後、束ねられ、スカッチングという工程に移ります。スカッチングとは、取り出しやすくなった繊維を茎から取り出すプロセスです。加工場で機械にかけられ、周りの固い皮などが取り除かれ、ほぐされて、柔らかい繊維となっていきます。この段階で、亜麻はリネンと変わります。 このように繊維のみを取り出すため、収穫された亜麻が全てリネンになるわけではありません。100kgの亜麻の茎からリネンになるのはわずか15kg。約15%がリネンとして使われ、残りは製造工程の中で失われるほか、燃料や飼料として活用されます。 次にハックリングという工程に移ります。リネンを櫛のようなもので梳き、長いものと短いものを選別していきます。次いで、リネンに艶を出すために木と鉄のロールではさんで鞣すドローイングという工程に入ります。こうすることで、次の紡績でもほぐれることのない、扱いやすい繊維になります。 それを終えると、スピニングと呼ばれる糸にしていくプロセスに移ります。水に通して糸をつむいでいくのですが、リネンをつなぐペクチンをコントロールしながらゆっくり丁寧に糸にしていくことで、柔らかな手触りの糸となります。水で濡らしながら紡績することをウェットスピニング(潤紡)と言いますが、ここが他の繊維加工の工程とは異なる特徴的な部分です。 できた糸は強度やカラーで仕分けられ、生地を織るためにボビンに巻かれます。糸の準備ができると織り機にかけられ、ウェービングという生地を織る工程に入ります。織り方としては、一般的な布の織り方である平織り、綾織りがリネンにも多く取り入れられています。これらの織り方のリネン生地は、衣服を中心に様々なアイテムに用いられます。 織り方を変えると、リネン生地の表情も変わります。平織り、綾織りの他に特徴的な織り方として、たっぷりのやわらかさが高級感を醸し出す二重織り、ふっくらした生地にするためにあえて粗く織るクレープなどもあります。またリネンワッフル生地は、表面に無数のサイコロ目が浮き上がり、吸水性と速乾性に優れ、可愛い印象の生地になります。 最終的に、染めや脱色といった最終的な工程が行われます。科学的な染料ではなく、基本的にすべて自然なものが使われます。手作業や機械で行われる染色に加え、インクジェットプリントも最近では可能なようです。 なお、リネンの染色方法は段階が2種類あります。ひとつは、まだ糸の段階で染める先染めと言われる方法。糸をしっかりと染められるため、風情のある色合いが出しやすい特徴があります。もうひとつは、生地になってから染める後染めです。こちらは織られた生地を染めるため、先染めに対して色ムラが出やすいのですが、むしろそこに味わいを見出す方も多いようです。 以上のように、とても多くの工程を経て、亜麻はリネン生地へと加工されていくのです。

ヨーロッパのリネン

世界ではヨーロッパを中心に栽培されていることは先に少し触れましたが、ヨーロッパでのリネンの歴史は長く、古代まで遡ります。大切に使うことで10年以上もつと言われる、丈夫で格式が高い「高貴な繊維」と呼ばれていて、昔から王室での晩さん会や婚礼の場のテーブルウェアとして使用されたり、肌触りの良さから、身分の高い女性の下着の素材として使われたりしてきました。下着という意味のlingerie(ランジェリー)という言葉の「lin」の部分は、リネンから由来していると言われています。他にも、嫁入り道具としてベッドリネン、テーブルリネンを一式揃え、長く大事に使い、自分の子供にまで引き継ぐこともあるようです。 そんなヨーロッパのリネンの中でも特に有名な4つをご紹介します。

フレンチリネン

フレンチリネンと謳ったアパレル商品を目にしたことのある人も多いのではないでしょうか。フレンチリネン自体にブランド力があることからも言えるように、フランスで生産されるリネンは質が高いと定評があります。 ただ実際のところは、原料の亜麻の栽培が農業としてフランス政府に保護されているものの、フランス国内には紡績や織りの工程がほとんどない状況です。 生地の特徴としては、他のリネン生地と比較しても滑らかで触り心地が良く、上質感があります。そのため、特に服に向いているリネンとされ、生産量が多い事もあってか、衣料品を中心に見かけることも多く、比較的手に入れやすいリネンです。

アイリッシュリネン

現在でいうところのベルギー王国の北部であるフランダース地方は、古代からリネン作りが盛んに行われてきました。宗教改革が盛んだった時代、フランダース地方の旧教徒が新教徒に追われ、アイルランドに移住しました。リネン技術者も多く移住したことで、アイルランドにリネン製品の製造技術が移転したことが最初のきっかけでした。 その後、アメリカ南北戦争の頃、アメリカは国内で衣服の生産ができなくなりました。その際、コットンの代わりとしてアイリッシュリネンを輸出したところ、品質の良さで人気に火が付きました。それ以来、高品質のリネンとしてアイリッシュリネンが有名になったようです。

ベルギーリネン

アイリッシュリネンで触れたように、ベルギーでは古代よりリネン作りが盛んで、リネンの本場として昔から品質が高いと定評があります。 ベルギーとフランスの亜麻の生産地域は、地理的には陸続きで続いていることもあり、ベルギーリネンはフレンチリネンと同様の品質です。ただし現在、スカッチングの後に繊維を取り出す工程、織りの工程はベルギー国内にあるものの、紡績の工程は国内になく、東ヨーロッパの各国に出されています。 長く使ううちに肌になじんでくるのが特徴で、ベルギーでは服のシワは人生のシワと同じとも言われています。また、柔らかな肌触りも特徴で、敏感な肌でも使うことができ、ベビー用品にも用いられています。夏は涼しく冬は温かく使える生地です。

リトアニアリネン

日本ではリトアニア産のリネンが多く流通しています。昔からバルト三国のリトアニア、エストニア、ラトビアはリネンの産地として有名で、特にリトアニアの文化の中でリネンは重要な役割を担ってきました。これらの国のリネンは、全ての工程が国内で完結しており、亜麻の栽培から繊維の取り出し、紡績、織りまで一貫して行われています。 生地の特徴としては、気候条件や土質の影響からか色がややグレーがかっていて、素朴な印象を与えます。フレンチリネンの高級感と比べ、その素朴さに魅かれる愛好家も多いようです。

日本のリネン

日本では亜麻栽培が一度姿を消したように、ヨーロッパほどの歴史はありません。ただ近年は、ライフスタイルの見直しに伴い、注目を浴びつつあり、年代を問わず人気が高くなっています。使い捨てではなく、良いものを長く使い続けることは、大量生産大量消費に歯止めをかけ、温暖化の抑制にもつながる地球に優しいライフスタイルですね。 そんなリネン人気と亜麻栽培の復活に伴い、国内でもリネン製品の製造が行われています。ちなみに国内で製織したリネンを国産リネンと呼びます。原料が国産であることは条件ではなく、例えばヨーロッパで生産された糸を、中国で紡績し、国内で製織した場合でも、それは国産リネンと言えます。 実際に国内でリネン作りに関わる企業をご紹介しましょう。

LINNET

リネット LINNET :Linen cotton Fabrics & mercerie Garden*Garden@LINNET リネン と 雑貨 京都にショールーム兼ギャラリーを構える、オリジナルのリネンファブリックを中心に厳選した自然素材の布や雑貨を扱うショップです。リネンの洋服やカーテンのオーダーも受けているようです。 豊富な種類のリネンファブリックを取り扱っていて、中には染物作家の手仕事が施された1点ものああったり、NHKの情報番組でリネンで作られた衣類の洗濯のしかたを紹介したりしています。

リネンハウス

リネンと暮らしのショップ リネンハウス LINEN HOUSE エコで快適な心地よさを持つリネンの素材感を活かし、暮らしに豊かさと幸せをもたらす提案をしているショップです。 快適さと安心のため、日本での製品化がモットーに、素材の確かさと、国内の麻専門工場での製織を大切にしています。できあがったリネン生地は、熟練職人が手作業で1枚ずつ裁断を行い、丁寧に製品にしていくそうです。 扱っている製品は、シーツやカバーなどのベッド周りで使うもの、バスローブや各種タオルなどのバス回り製品、パジャマや肌着といった衣類など、多岐に渡ります。リネンの肌に優しい特徴を活かしたベビー用品や、様々なリネンギフトもあります。

リネン専門店カリエンテ

リネン専門店カリエンテ ? Fine linens for your everyday life! 2002年からリネン製品のデザイン、制作を行っている大阪のショップです。いくつかあるヨーロッパの提携工場からリネンを輸入し、キッチン周りやベッド回り、テーブルウェアなどを取り揃えています。 扱うリネン生地の種類も様々で、フレンチリネンやアイリッシュリネン、ベルギーリネン、リトアニアリネンをはじめとする北欧産などがあります。

Faux & Cachet Inc.

リトアニアのリネン(麻生地)専門店・通販 / 卸売 - Faux & Cachet Inc. リトアニアリネンを扱う、大阪の専門店です。素朴な印象でがっしりとしたリトアニアリネンを通して、作り手のこだわりや丁寧な作業、穏やかな時間の流れるリトアニアの空気をも伝えたいという想いが込められています。 様々なリネン生地を取り扱っていて、リトアニアに古くから伝わるハックバックと呼ばれる技法で織りあげられた生地や、北欧らしい綺麗な発色のカラーリネンなどもあります。Webサイトでは、リトアニアの魅力や、リトアニアリネンの特徴を踏まえた手入れの仕方などを紹介しています。

ATTENTION JAPAN PRODUCTS

Vlas blomme| ヴラスブラム オフィシャルサイト ベルギーで数世紀もの間、リネン産業の中心として栄えてきたコルトレイクのリネンを取り扱っています。ブランド名のVlas Blomme(ヴラスブラム)は、フラマン語で「リネンの花」を意味しています。フラマン語はベルギーのフランダース地方の言葉です。 本当に良いもの、大事にしたいものを作っていくために、長く愛される服を最高品質のリネンだけを使って作るという想いで、2006年に誕生しました。ウィンターリネンやリネンデニム、リネンにまつわる新しい生地を開発していて、世界からも高い評価を受けています。

亜麻仁について

ここまで、繊維素材として活用する亜麻についてご紹介してきましたが、亜麻仁油をご存知の方も多いように、亜麻からは油が採取されます。ここからは亜麻仁油について、中でもまずは種について触れていきましょう。

亜麻仁とは

亜麻仁油の亜麻仁(あまに)とは、文字の通り亜麻の仁という意味です。仁とは種子、種の意味なので、つまり亜麻仁とは亜麻の種ということです。 亜麻は夏に花を咲かせた後、ぶどう程度の大きさの実がなります。その実の中に、多くて10個ほどの種が入っていますが、これが亜麻仁です。胡麻にとてもよく似た見た目ですが、大きさは胡麻よりひとまわり大きく、色はキツネ色と茶色の2種類があります。 亜麻仁は英語でFlax Seed(フラックスシード)ですが、学名はLinum Usitatissimumです。Linumは繊維素材として既にご紹介したリネンを意味していて、Usitatissimumはusitausという「最も有益な」という言葉に由来しています。亜麻仁には、その小さい粒の中にスーパーフードとも呼ばれる素晴らしい栄養素が含まれていて、学名はその健康効果を表わしていると言えます。 亜麻仁の栄養素は、とても長い歴史があるようです。スイスの石器時代の遺跡からは、亜麻仁を利用していた遺跡が発掘されています。西暦800年のフランスでは、シャルルマーニ大帝が亜麻仁を接種することを法令化しています。アメリカやカナダでも、その後に亜麻の栽培が始まり、食用やハーブとして亜麻仁が使われるようになっていきました。 日本でも最近では、オーガニック食品のお店やネットショッピングで、食用の亜麻仁が手に入るようになってきました。

亜麻仁を食べることについて

亜麻仁に含まれる健康成分としては、オメガ3系脂肪酸の「α-リノレン酸」をはじめとして、リグナンや食物繊維、抗酸化物質、ミネラル、ビタミンBやEなどが含まれています。これらの身体に必要な栄養素が多く含まれていることが、亜麻仁がスーパーフードと呼ばれる理由です。 亜麻仁よりも亜麻仁油の方が食用としては認知されていると思いますが、亜麻仁に含まれるリグナンと食物繊維は亜麻仁油に加工するとかなり少なくなってします。亜麻仁のまま摂取することのメリットはここにあります。 しかし亜麻仁をそのまま食べても、亜麻仁の殻は固いので消化されないまま排出されてしまいます。効果的に亜麻仁の栄養素を摂取するためには、粉状に挽く方法が有効です。家庭あるコーヒーミルやスパイスミル、またすり鉢でも挽くことができます。 亜麻仁は加熱せず、そのまま何かにかけたり混ぜたりすると良いとされています。ただ、加熱せず亜麻仁を直接摂取する場合、天然の有害物質であるシアン化合物が多少含まれているため、加熱するべきとの説もあります。 主に海外ですが、亜麻仁をそのまま接種している人は、粉状の亜麻仁をサラダやヨーグルト、シリアルにかけたり、スープに入れたり、ジュースやスムージーに混ぜたりして取り入れているようです。他にも、亜麻仁の粉でクレープのような皮を作り、具を巻いて食べるなどのレシピもあるようです。 他にも、亜麻仁が含まれている食品も様々なものが登場しています。他の雑穀と同じように、マフィンやベーグルといったパン類や、シリアルやグラノーラといったスナック類、また粉状のパンケーキミックスなどがあり、用途の開発が進められています。 人の他に、動物の飼料としても亜麻仁は使われています。亜麻仁を食べて育った鶏の卵は、北米や欧州、アジアなど世界各地のスーパーで売られていますし、家畜ではなく家庭用のペットフードにも含まれていたりと、用途が広がっています。

亜麻仁から亜麻仁油ができる

亜麻仁から抽出して作られるのが、亜麻仁油です。亜麻仁油も亜麻仁に近い健康効果が期待でき、最近は現代人の健康に効果をもたらすスーパーフードとして日本でも注目され、テレビや雑誌、インターネットで様々な情報が紹介されています。スーパーマーケットなどでも気軽に手に入るようになりましたね。

亜麻仁油について

スーパーフード亜麻仁から作られる亜麻仁油。ここからは亜麻仁油についてご紹介していきます。

亜麻仁油ができるまでのプロセス(収穫〜油の生成)

亜麻仁油を作るための亜麻は、花が咲いた後、色が茶色に変わった段階で、熟した亜麻仁の詰まっている実を収穫します。亜麻仁油のための亜麻は、寒冷地でたっぷりと陽を浴びたものが良いと言われています。 収穫した亜麻仁に圧力をかけ、じっくり丁寧に油を抽出します。植物油は高温で搾油する場合が多いのですが、この方法は亜麻仁油には向いていません。亜麻仁油に含まれる健康成分の中でも、特に貴重なのがオメガ3脂肪酸ですが、これは熱に弱く酸化しやすいという特徴があります。この成分を残したまま搾油する必要があるので、低温で搾油する、コールドプレス製法とも呼ばれる低温圧搾法で亜麻仁油を抽出します。ヨーロッパ基準では40℃以下とされ、そのように低温圧搾すると、オメガ3脂肪酸の成分を保持したまま油にすることができるのです。 食用として亜麻仁油を購入する際は、圧搾の方法もチェックするべきポイントですね。

亜麻仁油の使い方

健康食材としてメジャーな亜麻仁油ですが、用途は食用だけではありません。亜麻仁油の使い方は大別すると次の2つです。

食べる

食べ物や飲み物と一緒に直接摂取することで、亜麻仁油の健康成分を身体に取り入れます。亜麻仁油を食す時は、加熱せずにそのまま使うことが基本です。そのまま飲んでも良いですが、独特の苦みとクセがあり、そのままの味は苦手な方も多いのが事実です。 ただ、苦みやクセが感じられるということは、低温圧搾製法で作られたより栄養成分を多く含んでいるものとも言えます。逆に無味無臭の亜麻仁油の場合は、科学的な作られ方で精製されている可能性が高いです。ただ亜麻仁油の製法も進化を続けているため、苦手とされる原因となるにおいやえぐみを抑えた亜麻仁油も増えています。低温圧搾の亜麻仁油を選んだ上で、いくつか食べ比べてみて、自分が食べやすい亜麻仁油を見つけられると良いですね。 そのままではなく、もちろん料理や飲み物などと一緒に摂取しても良いです。その方が苦みやクセを感じにくく、抵抗がなくなる人も多いでしょう。加熱は避けるべきなので、調理法としては、かける、まぜる、和えるといった使い方が代表的です。

塗る

食べる他に、亜麻仁油は塗る使い方、塗料としても活用もされています。亜麻仁油は、空気中で化学反応を起こすことでだんだん酸化し、固まる性質を持つ乾性油(かんせいゆ)です。この自然乾燥するという特性が、塗料に向いているのです。亜麻から作られる天然素材なので安心ですし、他にも腐敗やカビに強い、水をはじく、化学物質で起こるシックハウス症候群などのリスクを抑えられるといったメリットがあります。 なお塗料として使う場合でも、食用の亜麻仁油で代用ができるので、スーパーなどで気軽に手に入れることができます。 DIYではワコトオイルに活用されています。ワコトオイルとは、木工品の表面に油を塗るオイルフィニッシュという手法に使われる油で、約70年前にイギリスで誕生しました。テーブルなどの家具や床など木製のものであれば、オイルフィニッシュは見栄えを良くしたり表面を保護したりといった効果が見込めます。 ワコトオイルは植物油と溶剤を混ぜて作られますが、その植物油には亜麻仁油が用いられます。乾性油である亜麻仁油が乾きやすく、塗ってもべたつくことがなく、むしろツヤを出しながら固まる特徴がオイルフィニッシュに向いているのです。 また他に亜麻仁油は、油絵にも使われていて、その歴史は古く15世紀には西欧絵画に用いられていました。油絵に使う油として最も一般的な「リンシードオイル」として、人工の顔料を練って絵の具にする際に加えられたり、絵の具を薄める際に足されたりといった様に使われます。 亜麻仁油には豊富なリノレン酸が含まれているため、同じ乾性油のポピーオイルと比較しても乾燥が早い特徴があります。加えて、高い固着性で丈夫な塗膜を作ることができ、絵の具では出せない光沢と透明感を出せることから、油絵の魅力を引き出すことができるのです。健康効果の高い油として有名な亜麻仁油ですが、絵画の世界でも最も重要な油と言われているのです。

亜麻仁油に含まれる成分その1:オメガ3(αリノレン酸)

ここまで文中にも何度か登場したオメガ3脂肪酸。聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。なぜ重要なのか、どんな効果があるのか、まとめました。

オメガ3脂肪酸とは

オメガ3脂肪酸は、三大栄養素の1つ、脂質に含まれる成分です。脂質とは脂肪酸が集まってできたもので、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸にわけられます。オメガ3脂肪酸は不飽和脂肪酸の一種で、不飽和脂肪酸は人が体内で生成できないため、食品などから取り入れるしかありません。 オメガ3脂肪酸の代表的な成分はα-リノレン酸です。このα-リノレン酸は体内に入ると、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)という成分に変換されます。これらは不足した状態が続くと病気を招く恐れがあり、逆に足りていると様々な健康効果があると言われています。

オメガ3脂肪酸はなぜ重要なのか

α-リノレン酸は体内でEPA、DHAに変化しますが、EPAは善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らしてくれます。DHAは脳の主要脂肪酸で、神経細胞を活性化し、脳の働きを向上させる効果があります。このような効果から、EPA、DHAに変換されるα-リノレン酸が健康に大変良いとされているのです。 例えば高齢の方に多く見られる認知症やアルツハイマーにも、α-リノレン酸が効果的とされていますう。摂取することで血栓が作られない効果が期待できるため、血管性認知症の予防になり、また脳神経細胞膜の機能向上も期待できるためです。認知症やアルツハイマーの予防策とし取り入れていきたいですね。 また妊娠中の母体にも、EPA、DHAが必要といわれています。オメガ3脂肪酸の摂取により、胎児の体や脳の発達を助け、早産のリスクの減少や、生まれてからのアレルギーが減る効果が期待できます。併せて、出産後の授乳の時期も、母乳を通して子供にEPA、DHAを届けるべきとされています。厚生労働省は、通常1.6gのところ、妊娠中授乳中の女性は1.8g摂取するよう呼びかけています。

オメガ3とオメガ6

不飽和脂肪酸にはオメガ3脂肪酸の他に、オメガ6脂肪酸もあり、どちらも必須脂肪酸です。必須脂肪酸の必須とは、人の体内では生み出せないので、食品などから摂取しなければならないという意味が込められています。 オメガ3脂肪酸については先にご紹介しましたが、オメガ6脂肪酸も同様に、適切に摂取するべき栄養素とされています。見込まれる効果としては、血中コレステロールの低減や悪玉コレステロールの抑制です。そのため、心疾患の予防や改善、動脈硬化のリスク低減が期待できます。 しかしオメガ6脂肪酸を摂りすぎると、善玉コレステロールの働きを阻害してしまいます。他に、血液の凝固や体内の炎症促進など、デメリットの引き金になる可能性も含んでいます。 オメガ6脂肪酸は、身近な食品に多く含まれています。植物油としてはベニバナ油やごま油といった家庭にもよくある油に含まれていて、スナックやお弁当といった市販の食品にも多く使われているので、無意識のうちに大量摂取してしまっている可能性も高く、注意が必要です。 オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸はそれぞれ違った効果がありますが、両者はバランスよく摂取するべきとされています。理想的なバランスは、オメガ3:オメガ6が1:4もしくは1:5です。オメガ3脂肪酸ばかりでは血液がサラサラになりすぎて出血が止まらなくなりますし、オメガ6脂肪酸が過剰になると血液が血管内で固まってしまいます。あくまでバランスが大切です。

オメガ3は不足しがち

オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の理想的なバランスに触れましたが、オメガ6脂肪酸に比べてオメガ3脂肪酸は摂りづらく、現代人は特に不足しがちです。 オメガ6脂肪酸は一般的な食用油に含まれているのに対して、オメガ3脂肪酸は主に青魚に含まれています。十分なオメガ3脂肪酸を摂取するには、毎日魚料理を食べなくてはなりません。昔ながらの魚料理よりも、加工品や肉料理を好んで食べる現代の食生活では、必然的にオメガ6脂肪酸は十分過ぎるほど摂れているにも関わらず、オメガ3脂肪酸は不足してしまうのです。 オメガ3脂肪酸の効果を考えると想像できそうですが、オメガ3脂肪酸が不足することで、脳や神経に異常が出るリスクが高まってしまいます。オメガ6脂肪酸ばかり過多になってバランスが崩れることで、血液がドロドロになり、詰まりやすく、血管の老化も進んでしまいます。ひいては脳梗塞や心筋梗塞の危険性にも繋がるため、オメガ3脂肪酸の摂取がいかに重要なことがわかりますね。

オメガ3を不足させないためには

体内で生成できない以上、オメガ3脂肪酸を不足させないためには、オメガ3脂肪酸を豊富に含む食品を摂取する方法しかありません。 ご紹介したように、オメガ3脂肪酸は青魚に多く含まれています。サケやマグロ、マス、イワシ、サンマといった魚が例として挙げられます。オメガ3脂肪酸はまとめて摂っても意味がなく、日々摂取を続けなければならないため、理想としては毎日魚料理を取り入れたいものです。 魚の他にオメガ3脂肪酸が摂取できる食品として、亜麻の種の亜麻仁から搾取した亜麻仁油や、シソ科の一年草であるえごまの種から搾取したえごま油といった植物油があります。これらは1日あたり小さじ1程度摂取すれば良いので、毎日魚を食べるのが大変という方も取り入れやすいかもしれません。 魚にしても植物油にしても、オメガ3脂肪酸の熱に弱く酸化しやすい特徴を踏まえた方法で摂取するとより効果的です。魚の場合、煮魚であればほとんど影響なくオメガ3脂肪酸を摂ることができます。焼き魚の場合でも、表面が焦げてはちゃんと摂取できないのではと心配になるかもしれませんが、身に含まれる脂肪酸には影響がないので問題ありません。 亜麻仁油やえごま油の場合はより酸化しやすいため、熱して使う調理油としては使わないようにしましょう。味噌汁やスープなどの温かい食べ物に入れても大丈夫ですし、豆腐やサラダにかけたり、そのまま飲んでも良いですね。

亜麻仁油に含まれる成分その2:リグナン

亜麻仁油に含まれるその他の代表的な健康成分として、リグナンがあります。ここからは、リグナンに期待できる効果や多く含まれる食べ物についてご紹介します。

リグナンの抗酸化作用

リグナンは、植物ポリフェノールの一種です。リグナンに期待できる健康作用の1つとして、抗酸化作用があります。 リンゴが皮をむいた状態で放置しておくと変色してしまうように、金属が徐々に錆がついてしまうように、人の身体も酸化します。呼吸で酸素を取り込むだけで、実は酸化をしているのです。また呼吸以外にも、紫外線や放射線や大気汚染、生活習慣では飲酒や喫煙、添加物の多い食事も原因です。日々のストレスもそうですね。必要以上に身体が酸化されてしまうと、血管の老化が進み、肌荒れや生活習慣病、がんの発生リスクが高まるなどのトラブルを引き起こすと言われています。酸化を抑える生活を心がけたいですね。 呼吸で体内に取り入れた酸素は、そのうちの1〜3%が活性化し、活性酸素と呼ばれるものになります。活性酸素には、体内のウイルスや菌を倒してくれるメリットがありますが、増えすぎて蓄積してしまうと、その酸化力の強さから、体内の健康な細胞までも攻撃してしまいます。リグナンの抗酸化作用により、この酸化を抑えることができるのです。

抗酸化作用以外の働き

リグナンには、抗酸化作用以外にも期待できる効果があります。

抗エストロゲン作用

身体の酸化はがんの原因の1つとして考えられているので、リグナンの抗酸化作用ががんの予防になると期待されていますが、中でも乳がん、子宮がん、前立腺がんなどの場合、がんの縮小も期待できます。これらのがんの発生理由としては、女性ホルモンであるエストロゲンの血中での濃度の高さと、脂肪の摂取量とされています。またがんの初期は、エストロゲンの影響で成長するとされています。 リグナンには抗エストロゲン作用があるとされているので、エストロゲンの濃度を抑える効果が期待でき、がんの縮小に繋がるという理由です。

抗炎症作用

リグナンは血小板を活性化する物質の分泌を抑制します。血液が固まるのを止める効果があるということです。この血小板を活性化する物質とは、炎症反応に起因するとされているため、リグナンには抗炎症作用があると言えるのです。 そもそも炎症反応とは免疫反応の1つであり、身体を守るためのものです。非常に重要な機能である一方、過剰に反応した場合、アレルギーや患部の痛みが出てしまうことがあります。

ホルモンバランス調節機能

リグナンは腸内でヒトリグナンという物質に変化します。これが女性ホルモンのエストロゲンと似た構造をしていることから、リグナンはホルモンバランスを整えると言われています。 先に触れた通り、子宮がんなどの軽減が期待できるエストロゲンを抑える作用がありますが、エストロゲンの濃度が高い場合は抑制し、低い場合は補うという、バランスを調節する作用もあります。女性の閉経後は急激にエストロゲンが減少することから、それを補うためにリグナンが注目されています。

肥満への効果

アディポネクチンという、脂肪細胞から分泌される善玉ホルモンがありますが、リグナンが体内に貼るとこのアディポネクチンが血中で増加します。 アディポネクチンは、糖や脂肪の代謝に関わり、血糖値やコレステロール値を下げる作用をします。脂肪燃焼作用もあるため、肥満の予防に加え、糖尿病やメタボリックシンドロームへの効果が期待できます。また血管の修復、拡張にも作用するとされ、血管疾患や動脈硬化にも有効と言われます。

リグナンが多く含まれる食べ物

リグナンは植物から摂取できますが、特に幹が木化し肥大生長する木本植物に多く含まれています。代表的な3つをご紹介します。

胡麻

胡麻にはゴマリグナンという抗酸化物質を含んでいます。胡麻は外皮が硬いので、そのまま食べてもゴマリグナンは摂取できず、消化されずに出てきてしまいます。ゴマリグナンをしっかり摂るためには、胡麻をすって外皮を壊して食べることがおススメです。 ゴマリグナンよりも、セサミンの方が聞いたことのある方が多いのではないでしょうか。セサミンの他に、セサミノールやセサモリン、セサモールといった仲間がゴマリグナンには存在します。

梅には梅リグナンが含まれています。そのまま食べても梅リグナンは効率的に吸収できないため、はちみつや焼酎に漬けたり、梅肉エキスや梅シロップとして摂る方法が良いでしょう。梅リグナンには、インフルエンザや胃がんの予防や、血液をサラサラにして動脈硬化を防ぐなどの効果が期待できます。梅干しが「一日一粒で医者いらず」と言われる理由の1つでしょう。

亜麻仁

亜麻仁にはアマリグナンが豊富に含まれています。ゴマリグナンの含有量が0.6%なのに対して、アマリグナンは亜麻仁の粒の中に、胡麻の倍の1.2%も含まれています。様々な食品の中でもトップクラスの含有量です。 これまでにご紹介した様々な健康効果をもたらしてくれるリグナン。一度に大量に摂るのではなく、毎日継続して取ることが大切です。日々の食事に亜麻仁油を取り入れることで、積極的に摂取したいですね。

亜麻仁油の健康効果

亜麻仁油に含まれる代表的な成分を2つご紹介しましたが、では亜麻仁油にはどんな効果が期待できるのでしょう。

美肌効果

亜麻仁油に限った話ではありませんが、体内に取り入れた油は細胞膜の主成分となります。細胞膜は、細胞を保護する役割を持ち、細胞膜を構成する油の質が良いほど、細胞膜の質も良くなります。亜麻仁油にはオメガ3脂肪酸が含まれていますが、オメガ3脂肪酸が多く含まれた細胞膜は非常に柔軟で丈夫。また不要な老廃物もスムーズに排出してくれます。 肌はこの効果が最も早く出るのです。そのためオメガ3脂肪酸の恩恵を受けた肌は弾力を保ち、中に必要な栄養素をしっかり閉じ込めることができるようになるので、乾燥などの肌トラブルを予防でき、肌荒れを抑え、ハリのあるつやつやな美肌作りに一役買ってくれます。逆にオメガ3脂肪酸が不足していると、細胞膜の柔軟性が失われ、乾燥や吹き出物といったトラブルを招きがちになってしまいます。 また、亜麻仁油に含まれるリグナンによる抗酸化作用、抗炎症作用も肌に嬉しい効果をもたらしてくれます。肌トラブルの原因の1つに、アレルギーがあります。アレルギー体質の場合、肌のバリア機能の低下により、アトピー性皮膚炎を発症する場合もあります。抗酸化作用、抗炎症作用は、こういったアレルギー性の炎症に、非常に効果的なのです。

ダイエット効果

ダイエットと聞くと、油は避けるべきと想いがちですが、良質な油はむしろ摂取するべきです。亜麻仁油もそんな油の1つで、多くの芸能人やセレブが利用しているとも言われています。 亜麻仁油に含まれるオメガ3脂肪酸のα-リノレン酸は、体内でDHAやEPAに変換されますが、これには善玉コレステロールの増加や、中性脂肪の代謝アップの効果が期待できます。 さらに亜麻仁油には、オメガ3脂肪酸とは別に、オメガ6脂肪酸のリノール酸、オメガ9脂肪酸のオレイン酸も含まれています。リノール酸は筋肉を増強したり、肥満を予防する効果が、オレイン酸には、悪玉コレステロールの減少により内臓脂肪の蓄積を予防する効果があります。 これらの成分を効率的に摂取できる亜麻仁油は、太りにくい身体へと導く、肥満予防の効果があると言えます。

動脈硬化の予防

亜麻仁油に含まれるオメガ3脂肪酸のα-リノレン酸が、体内でDHAに変化し、悪玉コレステロールを減らして、善玉コレステロールを増やす働きをするとご紹介しました。悪玉コレステロールが多い場合、動脈硬化が進行しやすく、心筋梗塞や脳梗塞の危険性が高くなります。 α-リノレン酸が悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やしてくれて、更に善玉コレステロールは血管の壁についたコレステロールを回収するという働きもするため、動脈硬化が予防できるのです。

心臓病リスクの低下

オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸は、炎症反応も抑える作用があります。炎症は心臓病をはじめとする慢性疾患の特徴の1つです。α-リノレン酸は、炎症を進める化合物の形成をブロックする働きがあると言われていて、血管炎症を抑制して、血管内皮機能を活性化することで、心血管疾患のリスクを低減させるとの研究結果が出ています。 また、亜麻仁油に含まれるオメガ9脂肪酸のひとつのオレイン酸も、心臓病の予防に効果があると言われています。オレイン酸は善玉コレステロールを保ち、悪玉コレステロールの増加を防いでくれる作用からです。 亜麻仁油に含まれるオメガ3脂肪酸やリグナンは、血液をサラサラにして固まりにくくする作用もあるので、心筋梗塞を予防できるという効果も期待できますね。

便秘の解消と止痢作用

腸内には非常に多くの細菌が棲んでいて、その数は100種類以上、約100兆個と言われています。そんな腸内細菌には、身体に良い影響をもたらす善玉菌と、悪い影響をもたらす悪玉菌、そのどちらにも属さない日和見(ひよりみ)菌があります。これらは腸内で種類ごとにまとまって生息していて、その様子はまるで様々な花が群生している様子に似ていることから、腸内フローラと呼ばれています。 腸内細菌のバランスが崩れると、便秘や下痢といった症状が起きます。腸内フローラのバランスを整え、そういったリスクを避ける働きをしてくれるのが、亜麻仁油に含まれるオメガ3脂肪酸なのです。 オメガ3脂肪酸には、止痢作用もあると言われています。これはオメガ3脂肪酸のα-リノレン酸によるもので、抗炎症作用により小腸の炎症を抑えて、回復をサポートしてくれるためです。 また亜麻仁油には、豊富な食物繊維も含まれています。しかも亜麻仁油に含まれる食物繊維は、水溶性と不溶性の2つがバランスよく含まれているのです。水溶性の食物繊維は、毒素が体内に入るのを防ぎ、悪玉菌を減らしてくれますし、不溶性の食物繊維は毒素を排出し、便の量を増やし、また柔らかく出しやすくしてくれます。亜麻仁油はこのどちらの作用も期待できるという事です。

うつ病や自閉症

亜麻仁油が身体に良いことは様々ご紹介してきましたが、身体以外にも、脳やメンタルへの効果も期待できそうです。 亜麻仁油のオメガ3脂肪酸は、脳の発達や機能にも重要な影響を与えます。オメガ3脂肪酸が不足してしまうと、脳の主要脂肪酸が摂取できず、脳の動きが悪くなります。情報伝達に使われるシナプスに不具合が生じ、神経細胞が衰えてしまう可能性があります。 これは自閉症の原因の1つとして考えられていて、米国でオメガ3脂肪酸を自閉症児に与えた結果、言語能力や学習能力、また社会性が向上したとの結果が見られたようです。神経の炎症が自閉症の兆候としてたびたび見られますが、オメガ3脂肪酸の抗炎症効果が作用し、自閉症が抑えられたのではと思われます。 また現代社会の問題として挙げられることの多い、うつ病への効果も注目されています。2015年、オメガ3脂肪酸が成人の抑うつ症状に効果がある可能性を示唆する研究が発表されました。この研究は結果的に、根拠に乏しく、効果があると断定できないと結論付けられましたが、2018年にはオメガ3脂肪酸による不安症状への効果について、新たな研究結果が発表されています。これは国立がんセンターの研究チームによるもので、オメガ3脂肪酸を摂取した場合は、摂取していない場合よりも不安症状が軽減されたということです。 現代人の生活からは切っても切り離せないメンタルの問題、今後の更なる研究に期待したいですね。

えごま油との違い

現代の食生活に不足している栄養素を補える食品として、亜麻仁油と並んで注目されているものとして、えごま油があります。それぞれの効果や特徴などについて比べてみましょう。

エゴマ油とは

えごま油は、別名しそ油、しそオイルとも呼ばれています。別名の通り、シソ科の1年草であるえごまという植物から抽出されるのが、えごま油です。えごまという名前から、胡麻を想像しがちですが、胡麻は関係がないのです。 えごま自体は、5,500〜1万年前も前の遺跡から、栽培されていた形跡が見つかったように、日本最古の油脂植物と考えられています。東北の福島や岩手や宮城、また岐阜県の一部では、えごまの葉を食べる習慣が今でも残っています。食べると10年長生きできるという言い伝えもあり、”じゅうねん”と呼ばれることもあるようです。 えごま油の抽出は亜麻仁油と同じく、低温圧搾法です。しその葉やえごまの葉のような爽やかな香りはありませんが、ほんのりとしその風味があります。クセがなくて食べやすく、料理にコクとまろやかさを加えてくれます。

亜麻仁油とえごま油の効果

亜麻仁油のもたらす健康効果の源として、オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸について様々ご紹介してきましたが、えごま油にも亜麻仁油同様、含まれています。含有率はどちらも約60%あり、結果としてどちらも同様の健康効果が期待できます。 またえごま油には、α-リノレン酸に加えて、ロスマリン酸やルテオリンも含まれていて、コレステロールの低減やダイエット効果、抗不安や抗アレルギー効果、記憶・学習への効果や、健康的な肌づくり、健康な関節の維持、認知症の予防や改善など、非常に様々な嬉しい効果が挙げられます。

亜麻仁油とえごま油の取り扱いの注意点

亜麻仁油もえごま油も、効果を最大限に活かすためには、注意するべき点があります。 どちらにも含まれる重要な成分であるα-リノレン酸は、酸化しやすい特徴があります。そのため、酸化の原因となる、光や空気への接触を極力避け、油の劣化を防ぎましょう。一度に大量に購入してしまうと、使い終わるまでに酸化してしまうので、比較的小さき使いきりサイズを購入する方が良いですね。開封前は冷暗所で保存しておき、開封してからは密閉した状態で冷蔵庫に保管します。 また摂取する際の注意点もあります。1つは加熱をしないこと。どちらも熱に弱いので、炒め油に使ったりなどはせず、ドレッシングなどのようにそのまま食べることで、栄養素を壊さず取り入れることができます。またいくら身体に良いからと毎日大量に摂るようなことは避けましょう。どちらも油であることには変わりないので、小さじ1杯程度でも約40キロカロリーあります。目安としては、大人で1日あたり4g程度(約小さじ1)、子供は3g程度、幼児は2gといったところです。 どちらかというと亜麻油は洋食向き、えごま油は和食向きと言われます。またえごま油は、しその風味を活かしてオリーブオイルのようにドレッシングに取り入れても良いでしょう。好みに合わせて、食べやすい方法で摂取していきたいですね。

亜麻仁油の選び方

早速亜麻仁油を使ってみたいと思われた方も多いのではないでしょうか?では様々な種類がある中で、どんな亜麻仁油を選ぶべきでしょうか。

自分に合った油を選ぶ

油が身体に良いからと言って、やみくもに摂っても意味がありません。まず考えたいのは、自分に合った油は何かということです。普段の食生活や身体の悩み事を振り返って、どのような栄養素を補うべきか考えましょう。 例えば、血圧の高さも気になるし、普段ほとんど魚を食べない、外食ばかりといった場合、亜麻仁油は有効な油と言えるでしょう。しかし、そもそも普段から油分を全然摂らない、肌がガサガサに荒れている場合は、亜麻仁油の他にも必要な油がありそうですよね。今の自分が補うべき栄養素は何かというところから、摂るべき油を選びましょう。 また摂取する油のバランスも大切です。この油が良いからとそればかり摂っていては、栄養素に偏りが出て、健康面でのデメリットも出てしまいます。例えば、最近女性に人気で話題のココナッツオイル。確かに、美容効果が高く、飽和脂肪酸を豊富に含んでいますが、摂りすぎてはエネルギー過多になり、血液の粘度が増し、血管を流れにくくなった結果、動脈硬化の危険性が高まってしまいます。 身の回りの油がそれぞれどんな特徴があるのかを抑えた上で、何をどう摂るべきか考えたいですね。代表的なサラダ油やごま油は。オメガ6脂肪酸を多く含んでいて、出血した際に止めてくれるなど、身体にとって大切な必須脂肪酸です。オリーブ油は、76%ものオメガ9脂肪酸を含んでいて、悪玉コレステロールを減らしてくれる効果が期待できます。先程も触れたココナッツオイルは、身体を動かすための大事なエネルギー源となる飽和脂肪酸を91%も含んでいます。 しかしサラダ油やごま油、オリーブオイルは、意識して摂らなくても普段の食生活で十分に摂取できていると言われています。対してオメガ3脂肪酸は、圧倒的に不足していると言われているので、亜麻仁油を代表とするオメガ3脂肪酸を含む油分を積極的に摂っていきたいものです。

正しい商品の見分け方

では亜麻仁油を摂る際は、どんな基準で製品を選ぶと良いのでしょうか。いくつかのポイントをご紹介します。

添加物なし

亜麻仁油は酸化しやすい油です。そのため、酸化を抑えるために、保存料などが入っているものもあります。選ぶ際には原材料を確認し、添加物が入っていないものを選びたいですね。

有機JAS認証

有機JAS認証とは、農林水産大臣が設定した品質や表示の基準に合格した製品のみにつけられる、認定マークのことです。認定を受けているということは、安全性の問題がないということなので、気になる方でも安心して購入できます。有機栽培された亜麻の種の亜麻仁油が良いなど、オーガニックにこだわる方の判断基準になるのではないでしょうか。

コールドプレス法

亜麻仁油に含まれる重要な栄養成分、オメガ3脂肪酸は、熱に弱い特徴があります。そのため亜麻仁油は、低温でゆっくりと油を抽出するコールドプレス方(低温圧搾法)で抽出することで、亜麻仁本来の栄養価をそのまま摂取することができます。また亜麻仁本来の風味を感じられる油になります。 亜麻仁油が人気になり、大量の商品が生産されている現在は、中には高温で抽出した亜麻仁油も存在します。コールドプレス法(低温圧搾法)の記載があるかどうかも、選択基準の1つとしてください。

遮光性のある保存容器

酸化に弱い亜麻仁油ですが、酸化する原因として、光や熱の影響があります。酸化をできるかぎり防ぐために、中身に光のあたらない遮光性のある容器のものを選ぶようにしましょう。透明な容器に入った亜麻仁油の場合でも、購入後に遮光性のある容器に移し替えたり、保管場所を光が当たらない場所にしましょう。

亜麻仁油の味と食べ方

ここからは、実際に摂取する際の味やおススメの食べ方をご紹介します。

どんな味?

亜麻仁油には、独特の苦みがあります。人によっては、クセが強くてそのまま食べるのは苦手という方もいるでしょう。しかし食べ方を工夫することで、その独特な味もそんなに気にならなくすることはできますし、大人で1日に小さじ1杯程度は摂取の目安なので、一緒に食べる料理の味にもほとんど影響はないと言っても良いでしょう。むしろ少し感じられる独特のクセが料理のアクセントになって、味をより引き立ててくれる場合もあります。 亜麻仁油の苦みやクセは、栄養素を多く含んでいる証拠とも言えます。苦みやクセは、亜麻仁の栄養素を丸ごと抽出できる低温圧搾法(コールドプレス法)で抽出された亜麻仁油の特徴だからです。逆にほとんど味も香りもない亜麻仁油は、化学的な製法で抽出されている可能性が高く、栄養素があまり期待できない可能性も高いです。ただ、以前に比べて製法も進化しているので、低温圧搾法でも独特のにおいやえぐみを感じづらい亜麻仁油もあります。製品によって味も様々なので、低温圧搾法で作られた亜麻仁油を選んだ上で、自分の好みの味を見つけられると良いですね。

食べ方

何度か触れてきましたが、亜麻仁油を摂取するには加熱せずそのまま摂ることがポイントです。例えばどのように食べるのが良いのか、いくつかご紹介します。

かけて食べる

できあがったいつもの料理に、そのままかけるだけで簡単に摂ることができます。 サラダにドレッシングと一緒にかけると、ドレッシングの味で亜麻仁油の独特の苦みも和らぎます。そうめんやざるそばなどの冷たい麺にかけて食べても、麺つゆによってクセが和らぎ、食べやすくなります。洋風の料理に合う亜麻仁油の風味を活かす使い方としては、冷ややっこにかけてみるのもおすすめです。いつもと違った風味で楽しむことができるでしょう。汁物としては、スープやみそ汁にかけても良いです。α-リノレン酸は熱に弱い特徴がありますが、温かい料理や飲み物程度であればあまり気にしなくても問題がありません。

まぜて食べる

料理や調味料に混ぜる方法も、かける方法と同じくらい手軽に試せますね。 特に亜麻仁油の味に抵抗がある方は、納豆から始めてみてはいかがでしょうか。納豆そのものの強いにおいとクセが、亜麻仁油のクセを気にならなくしてくれます。他にはサラダ油の代わりとして、マリネやディップソースに、オリーブオイルの代わりとして冷製パスタに混ぜても良いですね。和風の料理には、お浸しや和え物に少し混ぜてみてはいかがでしょうか。

そのまま食べる

亜麻仁油自体の味が好きな方であれば、最も簡単なのはそのままスプーンなどに移して食べることです。サプリメントを飲むのと同じ感覚で、毎日続けられると良いですね。製品によってはクセが特に強かったり、苦みが少なめだったり、まろやかに仕上げてあったりと、様々な味があります。お気に入りの味を見つけて、亜麻仁油そのものを毎日味わってみいてはいかがでしょうか。

相性の良い食材・料理

簡単に、栄養的にも相性の良い食べ方をご紹介します。

豆腐と一緒に

豆腐には、女性ホルモンと似た作用で有名なイソフラボン、脂質の代謝を促してくれるレシチン、活性酸素をサポートしてくれて脂肪の蓄積を予防してくれるサポニンが含まれています。特にコレステロールや中性脂肪が気になる方や健康維持をしたい方に嬉しい機能性成分が豊富に含まれているのです。α-リノレン酸をプラスすることで、更なるバランス健康食になりますね。 塩を少々振った豆腐を器に入れ、小さじ1〜2杯程度の亜麻仁油をかけます。お好みでネギや鰹節、生姜など、薬味を乗せて楽しみましょう。

サラダに

亜麻仁油はサラダとの相性が抜群に良いです。食べやすくカットしたお好みの野菜を、小さじ1〜2杯程度の亜麻仁油と和え、そこにワインビネガーも加えて混ぜます。塩コショウで味を整えましょう。ビネガーの酸味が亜麻仁油のクセをまろやかにして食べやすくしてくれます。また油とビネガー(酢)の組み合わせは、栄養素の吸収を高めてくれます。 レタスやトマト、きゅうりといった野菜に加えて、更に色々な食材をトッピングすると、更に栄養満点のサラダになります。スーパーフードと言われるキヌアやケール、マグネシウムが豊富で高血糖対策になるアーモンド、タンパク質としてゆで卵やささみやチーズなど、好きなものを加えてみましょう。

スムージーに

様々な野菜や果物と組み合わせることで、多くの栄養素を手軽に摂ることができます。組み合わせを何通りも変えて、毎日の朝食に取り入れても良いですね。野菜の苦みや果物の甘みによって、亜麻仁油のクセもあまり気にならなくなるでしょう。 例えば、サラダほうれん草1/2束、リンゴ1/2個、豆乳300mlに、亜麻仁油小さじ1〜2を加えてミキサーにかければ出来上がりです。ほうれん草などの緑黄色野菜は、デトックス作用や抗酸化作用、コレステロール値を下げてくれる効果が期待できますし、ビタミンCを多く含んだ果物は、美肌効果や紫外線ケアの働きをしてくれます。

代表的な亜麻仁油商品

店頭には様々な亜麻仁油が並んでいますが、製造メーカーによって栄養素や原産地は異なります。代表的な商品を3つかご紹介します。

有機食用亜麻仁油

米国の有機オイルメーカーである「オメガニュートリション」の有機食用亜麻仁油です。酸化しやすい亜麻仁油ですが、同社は製造から発送までの全工程で、酸化の原因となる光、熱、酸素を徹底的にカットしています。有機栽培された亜麻から抽出されたオイルを、劣化させることなく品質を保った状態で、ユーザーの手元に届けてきました。その徹底した品質管理に定評があり、楽天市場では7割を誇るリピート率です。

ニップンアマニ油

製粉事業をはじめ、オイルや乾麺、冷凍食品などの食品事業、ヘルスケア事業など、幅広く事業を行う日本製粉、通称ニップン。ニップンアマニ油を売り出していて、他にも亜麻仁の粒やドレッシング、サプリメントなど、様々な亜麻仁商品に力を入れています。 ニップンアマニ油は、カナダで栽培されゴールデン種と呼ばれる黄金色の亜麻仁だけを使っています。この亜麻仁は豊富なオメガ3脂肪酸を含んでいて、栄養素はお墨付きです。二重構造のボトルを採用し、、空気を徹底的にシャットアウト。酸化を防ぐ対策も万全です。

日清アマニ油

日本で初めてサラダ油を販売するなど、日本の食用油産業を常にリードしてきた大企業、日清も、亜麻仁油を取り扱っています。亜麻仁油に含まれるオメガ3脂肪酸のα-リノレン酸は、大人で1日2g程度の摂取が推奨されていますが、日清アマニ油は小さじ1杯あたり2.5g含んでいます。日清アマニ油を毎日小さじ1杯摂るだけで、亜麻仁油の栄養成分は十分に摂取できるという、適量のわかりにくい初心者にも嬉しい商品ですね。

亜麻仁油の保存方法

せっかく購入した亜麻仁油も、保存方法が悪いと本来の栄養素を摂ることができなくなってしまいます。ここでは亜麻仁油の保存方法についてご紹介します。

正しい保存方法

亜麻仁油を消費期限内に、鮮度良く栄養効果の高い状態で使い切るためには、いくつかポイントがあります。 まず1つは密閉すること。空気に触れると亜麻仁油の酸化が進んでしまうので、使った後はなるべく早く、しっかりと蓋を閉めましょう。入っている容器によっては、温度が上がると膨張し、蓋がゆるんでしまうこともあるかもしれません。時々チェックをしてみても良いですね。 次に保管場所です。温度が高い場所や光が当たる場所は避け、涼しく暗い場所に保管しましょう。ガスコンロの側や、直射日光や蛍光灯の光が当たる場所は避けた方が良いですね。細かいですが、亜麻仁油を購入した帰りに、熱くなった車中に放置するだけでも劣化を進ませてしまいますので、注意しててください。 保管場所として、冷蔵庫が良いのではと思われる方も多いのではないでしょうか。しかし多くの亜麻仁油商品には、冷蔵庫での保存は必須ではないと書かれています。温度や光に気を付ければ、特別冷蔵庫に保管する必要はないのです。特に冷蔵庫の中の、食品を凍結寸前の温度で冷却するために、温度が0℃付近に設定されているチルド室には入れない方が良いですね。亜麻仁油は0℃を下回ると、品質が下がってしまうのです。 もし低温で保管した結果、亜麻仁油に白い濁りができた場合でも、食べる際には気にする必要はありません。白い濁りは原料由来のもので、害があるわけではないためです。しかし本来は透明な油が白濁してしまうということは、保管場所として適していないということです。別に適した場所がないか考えてみましょう。 補足ですが、保存方法と併せて気を付けたいのが、使い切るまでの期間です。開封前の亜麻仁油は年単位で保存がききますが、開封した後は、おいしい状態で、栄養成分も損なわれる前に食べるために、1〜2ヵ月で使い切ることをおすすめします。

保存方法を誤るとどうなる?

何故ここまで保存方法が大切なのか、それは保存方法が悪く劣化した亜麻仁油は、摂取するでリスクが生じてしまうからです。 亜麻仁油は酸化すると、本来の栄養成分がトランス脂肪酸に変容してしまいます。トランス脂肪酸は、血管の柔軟性や弾力性に悪影響を与えると言われています。そのため、動脈の柔軟性や弾力性の低下で起こる動脈硬化などのトラブルを引き起こす原因となってしまうのです。酸化した亜麻仁油は摂取しないようにしましょう。 保存方法に気を使っていても、想定より早く酸化してしまう場合もあります。酸化しているかどうか確認するためには、匂いを嗅いでみましょう。酸化してしまった亜麻仁油は、購入時とは異なる独特な匂いがします。嗅いでみて少しでも変だと感じた際は処分しましょう。酸化に気付くためにも、亜麻仁油を購入した際は、開封したときの匂いを確かめておきましょう。 酸化について、購入時に気を付ける点もあります。陳列されている場所の日当たり良い場合、開封前から酸化が進んでいる可能性もあります。棚の下や奥の方など、なるべく暗い場所に陳列されているものを選びたいですね。また賞味期限も確認しましょう。未開封の状態で、既に賞味期限が近いものは、酸化が始まっているかもしれません。製造から賞味期限までの目安として、保存容器によって異なりますが、缶や遮光性の高い着色されたガラス瓶に入っている場合は約2年、無色で透明なガラス瓶に入っているものは約1年半、プラスチックの容器に入っているものは約1年です。購入時の参考にしてください。

亜麻仁油を用いた商品

健康効果が高く、是非とも習慣化したい亜麻仁油ですが、小さじ1杯程度とは言え毎日油を摂取することは、慣れないと大変だと思います。そこで、油としてではない、亜麻仁油が含まれた商品をご紹介します。

ドレッシング・マヨネーズ

日本製粉の亜麻仁油をご紹介した際にも少し触れましたが、亜麻仁油入りのドレッシングやマヨネーズは、各社が様々な商品を販売しています。 ドレッシングは、和風、ごま、シーザー、黒酢、塩レモンなど、バラエティ豊かな味の商品が登場しています。もちろんビネガーや塩コショウを加えて家庭で手作りもできますが、こういった商品を取り入れることで手軽に様々な味を楽しめるのは嬉しいですね。 マヨネーズは、亜麻仁油の酸化に弱い特徴から、あまり多く配合すると風味を損ねてしまうという難しい側面があります。それでも亜麻仁油をより多く配合しようと、各社での研究が重ねられているようです。マヨネーズで有名なキューピーのアマニ油マヨネーズは、独自の抗酸化技術により、30%もの亜麻仁油が配合されています。このくらい高い配合率でも、コクのあるマヨネーズ本来のおいしさを楽しむことができ、1日あたりの摂取目安として、約大さじ1杯の摂取で、2.6gのα-リノレン酸が摂れます。 炒め物などの加熱する調理油以外の油を使い慣れない方、保存方法に自信のない方など、気軽に取り入れる手段として試してみてはいかがでしょうか。

サプリ

毎日料理をする人ばかりではありませんし、料理に関係なく亜麻仁油を摂取する方法として、サプリメントがあります。サプリであれば、調理方法や時間や場所に関係なく摂取することができますし、水で飲むだけなので手軽に摂ることができます。 亜麻仁油のサプリといっても、カプセルなのか錠剤なのか、何が配合されているのかなど、商品によって様々です。ライフスタイルや年齢なども考慮して、自分に合ったものを選びたいですね。ここでいくつか亜麻仁油を使ったサプリをご紹介します。

亜麻仁油サプリメント(亜麻の里/有限責任事業組合 亜麻ルネサンス)

亜麻仁油をそのままカプセルに入れた、亜麻仁油をそのまま飲む感覚に近いサプリです。農薬を使わずに栽培された北海道産の亜麻仁を、低温圧搾法(コールドプレス法)で抽出した、100%ピュアオイルのみを使っています。精製を一切しておらず、まじりっけのない亜麻仁油だけを凝縮しているので、シンプルで安心安全です。 ピュアオイル100%のため、摂取する際は胃の粘膜を痛めない様に、十分な水と一緒に飲むようにしましょう。

北海道産亜麻仁油サプリメント(吉粋)

こちらも無農薬の北海道産亜麻仁を低温で圧搾した亜麻仁油100%のサプリです。添加物不使用で、ピュアオイルそのものをソフトカプセルに包んでいます。生粋は札幌に店舗をかまえていて、元は札幌市内に地元の特産品を販売していました。しかしその後、地元の特産品を全国に広めたいとの想いから、インターネットでの購入が可能になっています。 原材料の亜麻は、生粋の契約農家さんによる栽培のようです。亜麻を栽培しているのは国内では北海道のみで、サプリとしても国産原料のものは多くありません。国産にこだわる方はチェックしておきたい商品です。

リアルサプリ亜麻仁油(株式会社ディノス・セシール)

こちらも亜麻仁油を1粒に凝縮したサプリです。有機栽培された亜麻仁をじっくり低温で絞った亜麻仁油を100%使用していて、含まれる脂肪酸の50%以上がオメガ3脂肪酸のα-リノレン酸です。他にリノール酸、オレイン酸も含まれています。1日1粒で300mgの亜麻仁油を摂取することができ、厚生労働省が1日に摂るべきとしている量の約半分を補うことができます。 合成着色料や保存料、防腐剤などは入っておらず、医薬品工場で品質管理をされている安心感もありますが、なんといっても低価格なのが嬉しい魅力です。まずはちょっと亜麻仁油を試してみたい方も始めやすいサプリです。

AMANIソイ&フラックス(サントリーウエルネス)

女性らしさの成分を補うサプリとして、サントリーウエルネスが販売しているものです。特に40代以上の、ホルモンバランスの乱れが気になる女性におすすめで、健康をいうよりは美容を意識したサプリです。 こちらは亜麻仁1粒に1%しか含まれない亜麻リグナンという希少な成分と、大豆イソフラボンが主成分です。1日2粒摂取で、価格にして1日あたり60円。髪や肌にツヤやハリがないとお悩みの方に試していただきたいサプリです。肌のサイクルとなる30日間お試しをした後に定期購入ができる点が、始めやすいポイントですね。

DHA&EPA+ビタミンD(味の素)

安心安全な品質管理がモットーな味の素が販売しているのは、魚不足をサポートするサプリです。 1日で摂取するべきDHA、EPA、オメガ3の必須脂肪酸は2000mgと言われ、料理に換算すると、例えばマグロのお刺身なら約800g、鰹のたたきなら127gにもなります。現代の食生活の特徴として、青魚の摂取が不足していますが、毎日ここまでの量を摂るのは大変ですよね。まして年齢を重ねた方は食べる量も減りますし、病気などでカロリー制限のある方もいるでしょう。またビタミンDも、本来は紫外線を浴びることで体内に作られる成分ですが、紫外線対策などにより、不足しがちな栄養素となっています。 このサプリであれば、1日4粒を水で飲むだけで、DHAは300mg、EPA100mg、α-リノレン酸は100mgが摂取できます。金額にして1日あたり17円〜と、お財布にも優しいですね。

ペット用亜麻仁油

亜麻仁油を使った商品として、少し目線は変わりますが、ペット用オイルとしての商品もあります。代表的な亜麻仁油商品でもご紹介した米国の有機オイルメーカー「オメガニュートリション」では、オメガ3脂肪酸は動物にも効果的と、様々な医学研究の成果から判断し、ペットのためのサプリメントオイルを研究開発、販売しています。ペットフードだけでは不足する栄養分を補い、ペットに健康でいてもらうためにと、その他にも各社からペット用オイルは販売されています。 ただペットに亜麻仁油を与える際は、素人判断はせず、まずかかりつけの獣医に相談てください。専門家の意見をあおいでから与えるようにしましょう。

まとめ

以前に比べてどんどん認知が広がり、知られるようになってきた亜麻。魅力や健康効果など、ご理解いただけたなら何よりです。植物として、繊維として、食品として、是非あなたの生活に少しずつ取り入れてみてください。