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リネンと麻の違いとは?

突然ですが、リネンと麻の違いをご存知ですか?ふたつとも同じ意味では?麻を英語で言うとリネンになるのでは?厳密に言うと、実はどちらも正解ではありません。そこで今回は「リネンと麻の違い」と題し、その違いについて解説します。麻の種類や生地の特徴も合わせてご紹介します。

リネンと麻の違いについて

リネンと言えば麻のことだと考える人は、多いのではないでしょうか?衣類やキッチン雑貨など、買いたいと思う商品のタグを見ると、「リネン100%」または「麻100%」という表示があります。どう違うんだろう?と考える人もいることでしょう。実は、このふたつの素材には大きな違いがあります。まずは、リネンと麻の違いについて解説します。

麻とは?

麻とは、20種類以上あると言われる植物表皮の内側の繊維、または茎や幹から採取される「繊維の総称」です。この繊維は、「靭皮繊維(じんぴせんい)」と「葉脈繊維」に分かれています。

一般的に靭皮繊維は、葉脈繊維よりも柔らかいと言われています。
靭皮繊維の種類には、亜麻(リネン)、苧麻(ラミー)、黄麻(ジュート)、洋麻、大麻、そして葉脈繊維にはマニラ麻やサイザル麻といったものがあります。これらすべての種類をまとめた総称が「麻」であり、麻の代表的なものには「ヘンプ(大麻)」「ラミー」「リネン」があります。日本におけるその歴史をみてみると、縄文時代初期には麻(大麻)が日本にすでに生育していたこと、考古学的にも麻が出土している遺跡がいくつかあることがわかっています。このように、麻は古くから日本人に親しまれてきた繊維と言えるのです。

さて、麻を商品として考える場合ですが、消費者庁のホームページ「繊維の名称を示す用語」によると、現在、日本の繊維製品で「麻」と表示できるものは、亜麻(リネン)および苧麻(ラミー)の2種類のみです。2017年4月からは従来の麻という表示に加え、リネンや亜麻、ラミーや苧麻という表示も可能になりました。

先ほど「リネン100%」「麻100%」の違いは?という疑問がありました。麻100%はリネン100%、またはラミー100%、リネン/ラミーで100%のものとされています。

リネンとは?

リネン(linen)は、亜麻科の「亜麻(あま)」を原料にした繊維のことであり、植物の茎や幹から繊維をとる「靭皮繊維」の一種です。「最古の繊維」と呼ばれるリネンの発祥は古く、1万年前までさかのぼると言われ、麻の代表的な繊維と言われています。

植物繊維としてのリネンですが、高品質な加工品を産出する地域にあやかってフランス産の「フレンチリネン」などの地名を関したブランド化がされています。亜麻は比較的、寒冷地で育つため、国内は北海道の一部でも作られています。繊維が細かいため直接肌につけてもチクチクしない、通気性・保温性が高く年間通して快適に使用できる、そして水に濡れると強度が増すといった数々の優れた特徴を持っています。

リネン以外の麻の種類にはどのようなものがある?

上記からリネンは、「麻のなかでも靭皮繊維の一種」ということが分かりました。ここではリネン以外の麻について解説します。それぞれの特徴とともに、どのようなものがあるのかみていきましょう。

日本で表記される麻はリネンかラミーのみ

ラミーは、苧麻(ちょま)というイラクサ科の多年草植物の茎から採取される繊維です。上でも少し触れましたが、リネンと同様、靭皮繊維のひとつです。栽培には温暖な気候条件と湿潤な土地が必要であり、主産地として中国、マレー、フィリピンそしてブラジルがあがります。

ラミーの特徴は、天然繊維のなかで最もある光沢感、通気性や吸湿・放湿性に優れている点です。天然繊維のなかで一番強いと言われる糸の強度を持ち、硬く張りの強いラミーは何度洗濯しても耐性があります。また、水に濡れると繊維の強度が高くなっていくというメリットもあります。デメリットは、粗硬な繊維のため直接肌につけると、多少ゴワゴワとした感触があるところでしょう。また耐久性が弱く破れてしまうこともあります。

日本で表記される麻といえば、家庭用品品質管理法上、リネンとこのラミーのみになります。リネンと同様、衣料、寝具、カーテンなどのインテリアなど幅広い用途に使われています。

マニラ麻とも言われるアバカ

麻にはマニラ麻と呼ばれるアバカという種類もあります。アバカは葉脈繊維であり、高さ7メートルにも達する芭蕉科という多年草植物から採取します。

主な生産地としては、熱帯であるフィリピンやエクアドルが挙げられます。主な用途は、その強靭で弾力のある特徴を活かし、船舶用ロープや敷物に使用されています。

麻の仲間であるジュート

ジュート(黄麻)と呼ばれる繊維も麻の仲間です。生産地のひとつであるバングラデッシュでは、ジュートは「黄金の糸」と呼ばれています。

JETRO(日本貿易振興機構ジェトロ)の「国際ビジネスマッチング」では、バングラデッシュがジュートを日本へ輸出したいというページがあります。天然の金色の繊維ジュートは、カーペット、麻ひもや麻袋などに使用されています。

中国やロシアが生産地であるヘンプ

ヘンプは桑科の一年草で大麻と書き、中国やロシアなどが主な生産地です。大変丈夫な植物のため、農薬無しで3ヶ月の間に育ちます。最も古いものは縄文時代の遺跡から大麻繊維が発見されており、日本でも古来から栽培そして使用されてきました。

ヘンプは繊維細胞が大変細かいため、極上のソフトな肌触りを得られます。したがってリネン同様、衣料に使用されることがありますが、麻と表記できるのはリネンとラミーのみのためヘンプ使用の場合は「指定外繊維」と表記されます。
さまざまな麻の種類があることが分かったところで、話しをリネンと麻に戻しましょう。最後に、生地の特徴やどのような商品に使用されているかご紹介します。

リネンや麻の生地の特徴をご紹介

リネンや麻は古代から現代まで、多くの人々に使われてきました。長い間親しまれてきたのには、いくつかの理由があります。リネンや麻を使用した商品を、その特徴とともにご紹介しましょう。

リネンや麻を使用した商品をご紹介

リネンや麻を使った商品はとても多くあり、私たちの生活と深く関わっています。

女性に大人気のキュレーションサイト「キナリノ」でも、”暮らしを素敵に丁寧に”というコンセプトのもと、多くのリネン商品が紹介されています。それでは、代表的な商品をみてみましょう。

衣類:リネン商品で一番親しみのあるものの一つに衣類があります。シャツ、ワンピース、スカート、パンツそしてストールなど、どんなアイテムでもリネンなら素敵な雰囲気がだせることから幅広い年代の人に人気です。その着心地のよい質感、生成りを始めどの色を選んでも自然なリネンならではの発色が多く、適度に力を抜いたオシャレにぴったりのリネン。このようにナチュラルで自己主張しすぎないコーデができることから、リネンファンの心を掴むのでしょう。

ベッドリネン・タオル:麻の優れた機能のひとつに「吸水性・発散性」があります。リネンはその機能により、シーツ、ベッドカバーや枕カバーなどのベッドリネンに最適です。就寝中にかく汗・湿気を吸い発散させるので、サラッとした感覚を保つことができます。高い快眠効果を得られることからも、ベッドリネンが人気の理由となっています。また、吸水性・発散性の機能にくわえ、心地よい肌触りがあることからタオルやバスマットなどバス関連の商品にも使われています。

キッチン:テーブルクロス、テーブルマット、エプロン、キッチンクロスやコースターなどにもリネンや麻の特徴を活かした商品が多くあります。高級ホテルのレストランなどで正式なテーブルクロスとして、また一般家庭でも素敵で扱いやすい素材としてリネン商品が使われます。

麻の生地の特徴をご紹介

最後に、麻の生地にはどのような特徴があるのか、まとめてご紹介します。日本麻紡績協会のウェブサイトを参考に、いくつか抜粋します。

・非常に強い繊維である:天然繊維で最も強靭であり、水に濡れるとさらにその強度が増す。

・シャリ感・張りがある:接触冷感と合わせ、さわやかな着心地を得られる。

・優れた吸熱・発散性:麻の特性より、水分の吸湿・発散が速く、汗ばんでも速く乾く。

・優れた生分解性:植物繊維という特徴から生分解性に優れる。土に育まれ、土に還るエコ時代の繊維として注目されている。麻を使った商品が多く生まれるのも、これらの特徴を考えると自然なことだと言えるのです。

まとめ

モノで溢れかえった現代、リネンや麻は使い捨てでなく本物を大切に使い続けるという考え方にぴったりの貴重な素材です。使えば使いこむほど、着れば着込むほど、美しく変化する風合いが人気の理由ということからも分かります。中でもリネンはヨーロッパを中心に生活に強く根付いており、日本でも愛用者が多い素材です。麻と表記される事もあるリネンですが、麻とリネンの違いを理解し、使い分けてみたりその背景にあるストーリーや歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

参考:リネン生地の特徴・特性