
日本の伝統色でもある亜麻色は、ナチュラルな色合いが魅力の人気が高いカラーです。ある歌手の有名な曲の歌詞にも過去に使われたりして、ご存じの方も多いかもしれません。そこで、亜麻色とはどんな色なのか、色の由来なども詳しく調べてみました。
亜麻色はどんな色?
亜麻色ってどんな色?と聞かれても、具体的に説明するのはなかなか難しいものです。亜麻色という言葉は一般的に知られていますが、どんな色なのかをすぐにイメージできる人は多くはいないでしょう。同じ読み色のカラーもありますし、実はどのような色なのでしょうか?
亜麻色とは?
亜麻色とは、黄色がかった淡い褐色の、亜麻を紡いだ糸の色のことを指します。古くからある日本の色名だと思われがちですが、実は比較的新しく、明治以降に使用されるようになった新しい色名なのです。西洋において髪の色を形容する表現として使われていた英語のフラックスを、日本語に訳した色名です。(フラックスは亜麻の英語訳でもあります)フランスの作曲家であるドビュッシーの前奏曲「亜麻色の髪の乙女」が有名なことからも、一般的に毛髪の色として知られていることが良くわかります。亜麻色というのは金髪の一種や、金髪を表現する別の言い方だと思っている人が多いのですが、金髪ではありません。金髪というのは、黄色がかった薄茶色などと表現されますが、亜麻色の髪は薄い栗色のことを指しますから、金髪とはイメージが異なるのです。
亜麻色は薄い栗色という分類の中でもかなり淡く、日本人の髪には見られない色ということから、イメージがしにくいのかもしれません。少しわかりにくいのですが、曖昧な淡い色だからこそナチュラルな印象があり、優しさを与えてくれます。
同じ読み方の「天色(あまいろ)」との違いは?
亜麻色と同じ読み方の色に「天色(あまいろ)」があります。「天色」とは、晴天の澄み渡った空のような鮮やかな青色のことを指しますが、読み方によって色や意味が違ってきます。
一般的には「あまいろ」と読まれますが、「あめいろ」と読む場合もあり、これは「あまいろ」と同じ色のことを指します。しかし、「そらいろ」と読む場合は、「天色」よりも薄い紫みのある明るい青のことを指し、空色と同じ意味になるのです。その他に「てんしょく」と読まれる場合もあり、これは天候や空模様のことを表現する意味となり、色の表現とは異なります。亜麻色と「天色」は同じ読み色なのですが、亜麻色は黄色がかった淡い褐色のことを指しますから、それぞれ色味は全く異なります。
亜麻色の由来
比較的に新しい色名の亜麻色は、フランスの作曲家の作品にも使用されていることから、フランスが起源だとも考えられますが、どのようにして伝えられてきたのでしょうか?
亜麻色の起源はフランス?
西洋では毛髪の色として表現される淡い褐色の亜麻色は、日本人には見られることがあまりない髪色ということもあり、すぐにはイメージできない色です。フランスの作曲家ドビュッシーの作品で「亜麻色の髪の乙女」が有名ですが、亜麻色という単語を原題でも使っていることもあり、フランスが起源だとも考えられます。
フランスで使用される色にlin(亜麻)があり、亜麻色の髪というのは非常に明るいブロンドと訳されています。このようなことから、フランスでは、亜麻色の髪というのは金髪の一種に分類されている色だということがわかります。
フランスのサイトをチェックしてみると、ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」をイメージする挿絵として使用されている乙女の髪は、ほとんどが明るい金髪の髪色をしています。「亜麻色の髪」は、確かにフランスの作曲家であるドビュッシーの作品の名前として使用されていますが、フランスでは一般的には使われていない表現ですし、サイトを調べても、亜麻色の髪という色についての情報が出てきません。「亜麻色の髪」を英語に訳すと「flaxen hair」と表現されますが、英訳の表現で調べてみると、どのような色なのかの情報がたくさん出ていますし、髪色の表現として一般的に使用されています。しかし、フランスでも、1920年代に流行したギャルソンヌを象徴する個性的な女性歌手の髪について、「亜麻色の髪」と呼ばれていたようで、肖像画の髪色は淡い金色の髪をしています。女性の社会進出が始まった激動の時代の中で、安らぎや優しさを求めている様子、美しい情景を表現する言葉として「亜麻色の髪」が使用されたのかもしれません。
まとめ
毛髪の色を形容する表現として使われている亜麻色は、日本人には見られにくい髪色でもあるため、イメージするのが難しいかもしれません。黄色がかった淡い褐色の亜麻色は、金髪とは違いますし、金髪の色を表現する別の意味でもありません。亜麻色は、淡い褐色の中でもかなり淡く、亜麻の糸を紡いだ天然色の風合いが特徴の、優しさを与えてくれる色でもあります。実際製品として出来上がるときの亜麻の繊維であるリネンはきれいな白であることが多いでしょうから、その白に仕上がる前に亜麻色がある、ということをリネンを手にしたときにでも思い出していただけると嬉しいです。