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北海道は亜麻の一大産地だった

国内最大級の観光地・北海道。リネン製品の原料である植物・亜麻。このふたつが切っても切れない縁で結ばれていることはご存じですか?1871年に日本で初めて亜麻を栽培したのが北海道なら、2019年の現在に唯一亜麻を生産しているのも北海道なんです。どうして日本の亜麻は北海道だけなのか? どんな人が亜麻を育てているのか?このページでは亜麻を私たちに届けてくれる生産者のみなさんや、北海道と亜麻のつながりについて紹介していきます。

北海道で亜麻を作る人の想い

1871年に始まった日本の亜麻栽培も時代の流れによって衰退し、国産の亜麻はいま北海道でのみ生産されています。そんな貴重な亜麻を育てる人たちは、なにを想って亜麻と向きあっているのでしょうか。こちらでは亜麻の里HP内コンテンツ『亜麻と暮らす』から、農家のみなさんの声をいくつかご紹介いたします。

亜麻栽培の大変なこと

当別町で栄木ファームを営む栄木敏文さんは、亜麻栽培はとにかく収穫量が安定しないといいます。収穫が優れなかった年でも、最初はむしろ順調に育っていたというケースもあったそうです。

亜麻栽培を始めたころは「最初は作り方も収穫の仕方もわからなかった」と語るほど。何十年も前に終息した亜麻栽培を復活させるのは、決して簡単な仕事ではなかったことを伺わせます。

亜麻栽培で工夫している点

亜麻は復活してからまだ20年も経っていない、比較的新しい農業です。うまくいかないことも数多くあり、今もなお農家の方々による試行錯誤が続いています。

そんななか、亜麻の収穫を安定させるためにある工夫をしたのが大塚農場の大塚慎太郎さんです。大塚さんが手を加えた工程は種まき。天候の悪化でスケジュールが狂ってもあとで取り戻せるように、本来は5月ごろにおこなう種まきをすこし早めているそうです。あえて種まきの量を減らす年もあったとのこと。種が多すぎると全体的に質の悪い亜麻が育ちやすいと考えたうえでの試みだったようです。

亜麻栽培のやり方

亜麻の栽培に「これ」というやり方はまだありません。毎年プランを練りなおす農家も目立ちます。

亜麻栽培のスケジュールは4月下旬から5月にかけて種をまき、8月に収穫するのが基本的な流れです。しかし実際には、大塚さんのように種まきを早めるところもあります。

ほかにも「8月ごろの雨にそなえて最初からたっぷり肥料をやる」「農薬を使わず手で除草する」など、それぞれの農家が作戦をたてて亜麻栽培にチャレンジしています。どうしてそこまでして亜麻を育てるのでしょうか。その答えは、当別町で農家を営む織田さんのこの言葉に込められています。「亜麻を楽しみにしてくれているお客さんがいることが、何よりの励みですね」

参考:日本で亜麻に携わる方々〜亜麻編〜

北海道と亜麻の関係

こちらの項目では北海道における亜麻の関係と、歩んできた歴史を解説していきます。日本の歴史に亜麻が初めて登場したのは江戸時代です。しかし当時は薬として海外から輸入していただけで、栽培は明治時代に入ってから始まりました。北海道が生産地になった理由から、現在までの歴史までをくまなく見てみましょう。

北海道は亜麻の一大産地

亜麻はアマ科の一年草で、涼しい地域でよく育ちます。海外ではリネンの名産ベルギーを筆頭に、フランス、ロシア、中国などが生産地として有名です。日本はこれらの国と比べると高温多湿であり、亜麻の生育には不向きな国といえます。そんな日本のなかで亜麻を育てるにふさわしい地域がひとつだけありました。

そう、北海道です。「北の大地」と呼ばれるほどの寒さと乾燥した空気は、亜麻にとって理想的な環境といえます。

日本での亜麻栽培を提案した人物、トーマス・アンチセルも北海道の気候に目をつけたと考えられます。1874年にトーマスの提言を受けいれた日本は、北海道で亜麻の栽培を本格的に始めました。それから約150年。現在では亜麻公社という会社が中心となり、北海道の大地は今でも亜麻を育みつづけています。

北海道における亜麻の歴史

北海道で初めて亜麻が栽培されたのは1871年のころ。北海道七重村で試作したのが始まりと考えられています。1874年にはトーマス・アンチセルの意見を受けた在ロシア公使・榎本武揚が亜麻の種子を日本へ送り、日本で本格的に亜麻の生産が始まりました。

北海道での亜麻事業はとても順調に進みました。第二次大戦下では麻の需要拡大から亜麻の生産量が増加、1945年にはピークに到達。ピーク時には北海道の亜麻畑は約4.9万ヘクタールもあったといわれています。

戦争が終わると麻の需要減少にともなって亜麻の栽培も衰退し、1967年には北海道で亜麻事業が終了。日本から亜麻畑が姿を消しました。しかし2004年に「北海道にふたたび亜麻を」を合言葉にする亜麻公社が設立。当別町ほか各地で亜麻栽培を復活させました。同社は現在、亜麻をとおして地域の活性化を目指す「亜麻ルネサンスプロジェクト」にとりくんでいます。

北海道の亜麻畑

一時はなくなってしまった北海道の亜麻畑も、有志の努力によりかつての姿を取り戻しつつあります。この項目では、現代に復活した亜麻畑がどんなものかを見てみましょう。亜麻と聞くとついリネンや亜麻仁油といった製品を連想してしまいがちです。ですが、製品の素材である亜麻畑にも素敵なところがたくさんあるんですよ。

北海道の亜麻畑の場所

現在、亜麻畑は札幌市を中心に新十津川町、月形町など各地域に展開しています。今いちばん有名な亜麻畑は、最初に亜麻栽培を復活させた当別町の亜麻畑でしょう。

当別町は札幌市中心地から20〜30kmほど離れたところにあります。亜麻公社の拠点もこの町であり、いわば北海道亜麻の聖地ともいうべき場所です。

毎年7月には一面に咲きほこる亜麻の花を楽しむ「亜麻まつり」を開催。時間は例年7:00〜13:30となっています。亜麻の花は午前中に咲いて午後には散ってしまうため、このような一風変わった形式をとっているとのことです。この亜麻まつりでは亜麻畑を目で楽しむだけでなく、当別町の名産品販売やご当地食品の飲食スペース、名曲『亜麻色の髪の乙女』にちなんだ歌唱コンクールなどを開催しています。亜麻畑が織りなすキレイな風景を眺めながら、当別町のおもてなしを楽しむのもいいかもしれませんね。

亜麻の花について

亜麻といえば『亜麻色の髪の乙女』。ならば花は茶褐色だ、とお考えの方はいらっしゃいませんか?残念ながら、亜麻色の茶褐色とはリネンの繊維のこと。亜麻の花は淡い紫色で、見る人にはかない印象を抱かせるとてもキレイな花なんです。

亜麻が咲くのは毎年6月下旬から7月上旬にかけて。青空が広がる初夏に見る亜麻畑はとても清々しく、眺めていると思い出深いあの夏がよみがえってくるかのようです。

ちなみに亜麻は毎年同じ土地で育ててはいけない性質があります。先ほどご紹介した当別町だけでも畑が数か所あり、亜麻を育てる場所を毎年変えています。「亜麻畑をこの目で見てみたい!」と思った方は、時間や場所をチェックしてから観光するようにしましょう。

参考:亜麻の花はどこでいつ見られるのか?

まとめ

亜麻と北海道の深いつながり、そして亜麻のために尽力する人々にクローズアップしてきました。日本最大の観光地というイメージが強い北海道には、こんな意外な一面があったんですね。いま日本で亜麻を栽培しているのは北海道だけです。今後ふと手にとった亜麻の商品が国産品でしたら、北の大地でがんばっている人たちへ思いを馳せてみてください。そしてもし7月ごろに北海道を訪れる機会がありましたら、ぜひ亜麻畑のある地域をたずねてみてください。淡い紫色で染まったすばらしい景色があなたを迎えてくれることでしょう。

参考:亜麻と大麻の違い