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日本で亜麻に携わる方々〜亜麻編〜

アマ科の一年草である亜麻(あま)は大変優れた植物です。人気のリネンや、スーパーフード亜麻仁油を作り出し、自然の恵みを私たちに届けてくれます。このような自然素材や健康に良い商品を利用できるのは、亜麻を栽培し、商品を開発する人々がいるからです。日本で亜麻に携わる方々をご紹介します。

日本における亜麻栽培について

亜麻の歴史は驚くほど古く、古代エジプトの時代からあったと言われています。日本では、明治時代に亜麻栽培が本格的に始まりました。北海道の気候や風土が亜麻栽培に適していたため、北海道開拓使によって導入されたのです。最盛期には北海道で約4万ヘクタールにもなりました。4万ヘクタールとは、例えばゴルフ場で考えると600コ分に相当しますから、いかに当時、亜麻栽培が盛んだったかが伺い知れます。しかし、昭和43年以降、化学繊維の出現などの理由で亜麻の需要が減り、工場は封鎖され、亜麻栽培も姿を消していったのです。しかし、亜麻栽培にはストーリーが生まれました。あの頃の亜麻栽培を復活させたいという動きが北海道の人々のなかであったのです。さっそく、ご紹介しましょう。

日本での亜麻栽培の中心は北海道

現在、日本における亜麻栽培の中心は北海道です。その理由は実にシンプルで、冷涼な北海道の気候が亜麻の栽培地として最適だからです。

暑い夏、私たちが避暑を求めて訪れる土地は亜麻にも適し、伸び伸びと成長するのです。亜麻は、細い茎の先に薄紫色の可憐な花をつけます。7月、青空がひろがる広大な北海道の地に、一面の亜麻の花畑を見れば感動です。朝早く咲き、昼には散ってしまうという花の特徴もさらに美しさを引きたてるのでしょう。その北海道に亜麻を復活させ、多くの試みを実現している企業があります。

亜麻に関わる方々

北海道には亜麻を栽培するだけでなく、商品の企画から製造・販売をしている企業があります。

亜麻生産組合による栽培、亜麻公社による製造、そして亜麻ルネサンスによる商品の販売です。この3社は、亜麻を復活させようという考え方を持つ”亜麻産業クラスター”という集団として「亜麻ルネサンス構想」を掲げています。

”北海道にふたたび亜麻を”という信念のもと、約40年ぶりに亜麻の栽培を復活させることに成功しました。次では、この3企業について詳しくご紹介しましょう。

参考:北海道で亜麻栽培が行われているところ

亜麻公社で日本の亜麻栽培に携わる方々

2001年、亜麻生産組合、亜麻公社そして亜麻ルネサンスが北海道における亜麻産業の復活に向け連携しました。亜麻生産組合は、当別町と新十津川町の契約農家で成り立つ組合であり、農薬不使用で亜麻の栽培をします。亜麻公社は、亜麻関連商品の開発・製造を行ない、それらの商品を亜麻ルネサンスが販売するという役割を持っています。亜麻公社は、「亜麻ルネサンス構想」をもとに事業を行なうための中核企業です。以下、亜麻公社の事業について詳しく解説します。

亜麻公社の事業について

亜麻公社 公式サイト

亜麻公社は2004年、北海道・当別町で事業をスタートしました。約40年ぶりに亜麻栽培を復活させたのが、この亜麻公社です。

信頼のおける生産者の手によって栽培された無農薬の亜麻だけを使用し、数々の商品を開発・製造しています。商品の開発・製造だけでなく、亜麻公社は毎年「北海道亜麻まつりin当別」というイベントを企画・主催しています。

このイベントは、毎年亜麻の花畑が満開になる7月上旬に開催され、リネン採取や糸紡ぎの体験ができたり、亜麻フォトコンテスト入賞作品の展示、そして数々の亜麻製品の販売が行なわれます。10年以上続くこのイベントには、青空のもと亜麻の花を愛でたり、亜麻に親しむ機会を求めて多くの来場者が訪れます。当初の”北海道にふたたび亜麻を”という思いが見事に果たされているのです。

亜麻公社が手掛ける亜麻商品

亜麻公社が手掛ける亜麻商品をご紹介しましょう。代表的な商品としては、やはり亜麻仁油があげられます。北海道産の亜麻の種だけを使用し、ゆっくりと丁寧にオイルを抽出するコールドプレス法で作られた亜麻仁油には豊富なαリノレン酸が含まれ、私たちの生活を健康なものにし、また美のサポートをしてくれます。

また注目すべきなのは、国産初の開発に成功した亜麻仁油サプリメントでしょう。他にも、柚子たまねぎ味の亜麻仁油ドレッシング、焙煎した亜麻の実やトドマツやラベンダーを配合した石けんなどもあります。どの商品も体に良く、自然由来のため、安心して使用できるものばかりです。

日本各地で亜麻栽培に携わる方々

さらに、亜麻栽培に携わる方々の紹介を続けます。消費者とのつながりを大切にしている北海道のコタニアグリさん、そして、長野県信州で亜麻の試験的栽培を始めた和みの風さんです。

北海道コタニアグリと亜麻の歴史

北海道コタニアグリ 公式サイト

農業が盛んな北海道、十勝総合振興局管内にある更別村。広大な十勝平野の真ん中に位置し、雄大な日高山脈が一望できる更別村に、160ヘクタールもの広大な農場を持っているのが小谷公一さんが経営する「コタニアグリ」さんです。こちらでは小麦、じゃがいも、ビートの他に、亜麻が生産されているのです。小谷家が亜麻栽培を開始した歴史をご紹介しましょう。昭和42年、父誠一さんが更別村に112ヘクタールの土地を取得します。公一さんは、酪農学園大学卒業後、カナダ・オンタリオ州で1年間の酪農実習を得て昭和52年に更別村に戻ります。しかし、2回のオイルショックという不景気の時期を迎え、平成2年には畑作専業に変更する一大決心をします。小麦、じゃがいも、ビートを栽培しながら、合理化を図ります。そこで開始したのが亜麻の栽培だったのです。コンバイン1台で収穫の作業が完結する”ヨーロッパ型農業”に注目したからです。

小谷さんは農場の様子を”見える化”することをモットーに、農場訪問やホームページの開設などを行なっています。亜麻の花が見ごろの時期には、撮影講座付きのツアーの企画など、大変積極的に”作る農家”と”食べる消費者”のつながりにこだわりを持った活動をされています。

長野県信州北相木の亜麻栽培

長野県信州北相木 公式サイト

亜麻栽培は北海道というイメージが強いなか、長野県で試験栽培を始めた「和みの風」さんをご紹介しましょう。長野県信州・南佐久郡にある北相木村は八ヶ岳を望み、標高約1,000mの高原気候を持ち、水と空気が綺麗な村です。

オーナーの佐藤さんは、化学繊維や使い捨てが当たり前のようになっている現代に疑問を感じていたところ、自然の素晴らしさに気づかせてくれたのが布であり、なかでも亜麻生地が最適と考えました。

そして2015年5月、亜麻の栽培が村の元気につながればという思いと、高地寒冷という気候を活かして亜麻栽培を成功に導きました。村の応援を得て亜麻栽培をし、facebooでは亜麻の繊維が糸になるまでの過程、糸つむぎワークショップの様子や、可憐な亜麻の花の写真が投稿されています。そして安心、安全、そして昔ながらの加工方法を得た亜麻商品を取り扱っています。

参考:亜麻の花の色や咲き方

亜麻に携わる方々の熱意こそ、今後も亜麻産業成長の可能性へ

日本で亜麻に携わる方々を紹介しました。長い間の思いを胸に行動を起こし、チャレンジ精神ととこだわりを持って製品開発や製造を行なっています。このような熱意ある方々により、生活に豊かさを与えてくれるアイテムが私たちの手元に届きます。リネンのある暮らしや、健康志向をサポートする亜麻の商品にはすでに多くのファンがいます。これからどんな新しいものが生まれるか、期待しましょう。

参考:日本で亜麻に携わる方々〜リネン編〜