
ナチュラルな質感で機能性に優れた素材であるリネン生地は、衣類だけでなく、生活雑貨やインテリアファブリックなど、生活の中のあらゆる物に使用されています。ただ、リネン生地には取り扱いに注意すべき点もあります。ここでは、リネン生地のメリットやデメリットを確認しながら、取り扱いや保管する際の注意点についてご説明します。
リネン生地の長所と短所
リネン生地を正しく取り扱うために、まずは素材の特性についてしっかりと把握しておくことが大切です。事前に生地の特徴を知っておけば、取り扱う際の注意点がスムーズに理解できるでしょう。
リネン生地の長所は?
高品質で高機能なことで知られているリネン生地には、下記のメリットがあります。
1、優れた吸水性と速乾性:繊維の内側に空気を含んでいる構造で、水分や湿気を素早く吸水してくれる特性があり、その吸水性はコットンの4倍もあります。水分を自然に外に出そうとする特性もあるため、すぐに乾いてくれます。
2、耐久性に優れ丈夫で長持ち:細かい構造で引っ張る力が強くて伸びにくく、コットンと比較すると2倍もの強度があります。水に濡れるとさらに強度が増すので洗濯も気兼ねなくできますし、耐摩耗性があるので丈夫で長持ちします。
3、汚れにくく、防臭効果も高いため衛生的:リネンの繊維に含まれている成分のペクチンには、繊維をコーティングしてくれる効果があります。そのため、汚れがつきにくいとう特徴があり、匂いも付きにくくなっています。
4、一定温度に保ってくれる保温性:リネンは繊維の特性上、自動的に温度調節をして内側の温度を一定に保ってくれます。どの季節でも快適に過ごせる素材です。
5、高い熱伝導性:リネン素材は、あらゆる天然繊維の中でも熱伝導率の高さに秀でていて、温まりかたの速さはウールよりも優れています。季節に関係なく、年間を通して使用できる優れた素材です。
リネン生地の短所は?
リネン生地は、優れた機能性がある反面、デメリットもあります。
1、シワになりやすい:水に濡れると強度を増すという特性から、洗濯をすることで繊維が偏ったり生地にハリがでるため、シワになりやすい素材です。強く脱水をかけてしまうと強いシワが残り、アイロンをかけないと取れてくれません。
2、縮みの可能性:水に濡れると5?10%ほど引き締まる性質があり、洗濯をすることで縮む可能性があります。ただし、生産時の仕上げかたによってはまったく縮みのない繊維も存在します。基本的には太い糸で織られているものほど縮みやすい傾向にあり、これは綿も同様です。
3、変色しやすい:天然素材は直射日光に弱いという性質があり、紫外線の影響で色あせなどの変色がしやすい素材です。ただ、使っているうちに変化する色彩は、天然素材のリネン生地ならではの魅力でもあります。
リネン生地の取り扱い注意点(水通し・洗濯)
リネン生地は、取り扱いにひと手間を加えることで、長く大切に使うことができます。メリットやデメリットをしっかりと理解したうえで、注意して取り扱うようにしましょう。
リネン生地の水通しの際の注意点
水通しとは、洋服などを仕立てる前(生地の状態)の下処理のことで、リネンやコットンなどの水に濡れると縮みやすい性質の生地に行われます。特にリネンは、水に濡れると縮む割合が高く、洗濯した時の縮みによって、型崩れや歪みを起こす可能性があります。 水通し不要な下処理が施されているケースもありますので、生地購入時は購入元に尋ねるのが良いでしょう。
必ずしも水通しを行わなければいけないものではありませんが、リネン素材のデメリットを引き起こさないためにも、裁断する前に水通しをして生地を整えておくと安心です。水通しは、注意点を確認しながら下記の方法で行いましょう。
1、大き目の容器にたっぷりと水を入れ、生地を入れて1時間ほど浸します。色移りの原因となるため、複数の生地を一緒に浸すのは避けてください。そして、長時間の浸水は色落ちや生地を傷める原因となるため、1?2時間程度に留めましょう。
2、きれいに折りたたんで、手のひらで叩くようにして水気を抜きます。布目が歪んでしまうので、絞るのは禁物です。
3、物干しに生地を広げて、余分なシワを伸ばしながら干します。紫外線の影響による色あせなどの変色を避けるために、生地を中表にして陰干しをしてください。
4、半乾きの状態で裏からアイロンをかけ、布目の歪みなどを整えます。しっかりと乾くまで干してしまうとシワが残ってしまうため、必ず半乾きの状態でアイロンをかけましょう。
リネン生地の洗濯の際の注意点
シワや縮み、色落ちなどの変色といったリネン生地のデメリットをできる限り避けるためには、洗濯する際にも注意が必要です。
1、中性の洗剤で単独洗いをする:汚れの強いものを洗う強力な洗剤は生地を傷める原因となるため、中性のオシャレ着洗い用の洗剤を使いましょう。温度が高いと縮みやすいため水を使用して、色移りを避けるためにも、単独洗いすることをおすすめします。また、リネン生地を洗濯する際には洗濯ネットを利用することがおすすめです。洗濯ネットについては、1つのリネン商品に対して1つネットを用意することがおすすめです。
2、脱水時間が短いコースを選ぶ:長時間の脱水は、生地にシワを作ってしまう原因です。通常の洗濯コースは脱水時間が長く設定されているので使用せずに、ソフト洗いやドライマーク洗いなどの脱水時間が短いコースを選びましょう。そして、濡れたままの放置はシワや生地を傷める原因となるため、脱水後はすぐに干して自然乾燥をしてください。乾燥機は生地が縮む原因ですし、型崩れを起こしてしまう可能性があるので、使用しないことです。
3、陰干しをする:リネンなどの天然素材は直射日光に弱いという性質があり、紫外線の影響で色落ちや黄ばみなどの変色を起こす可能性があります。直射日光を避けて中表にした状態で、余分なシワを伸ばして陰干しをしましょう。
4、生地を湿らせてからアイロンをかける:乾いた状態でアイロンを強く当てると、生地がテカリを起こして傷んでしまいます。シワが気になる場合は、半乾きの状態、または霧吹きで生地を湿らせてから、中音程度のアイロンを裏から当てて整えましょう。
リネン生地保管の際の注意点
大切に保管してあったリネン生地を出してみたら、色あせてしまったことにガッカリした、というケースも少なくありません。リネン生地は、保管する際にも気をつける必要があります。
リネン生地を保管する際の注意点は?
リネン生地を保管する上で、最も悩まされるのが色あせです。色あせをできるだけ防ぐために、このような点に注意しましょう。
1、光のあたらない場所に保管する:リネン生地のような天然素材は、日光による紫外線だけでなく、蛍光灯などの室内の明かりが当たるだけでも色あせなどの変色が進んで劣化します。長期間の場合は特に、光があたらない暗い場所に保管をしてください。
2、畳み直しや風通しをする:摩擦に弱い天然繊維は、テカリや色あせしやすい性質があります。折り畳んで重ねた状態というのは、生地が引っ張られて負担がかかるため摩擦が起きやすく、シワやスジがつきやすくなります。長期間保管する場合は、同じ状態で放置するのは禁物です。生地への負担を軽減させるためにも大きめに畳み直したり、ハンガーに吊るして風通しをするなど、定期的に手直しをすることが大切です。
まとめ
リネン生地は、優れた吸水性や速乾性など、機能性の高い繊維で、生活の中のさまざまなアイテムに使用されています。耐久性にも優れて丈夫で長持ちすることから、10年後も美しいと言われるリネンですが、大切に長く使うためにも、正しい取り扱いや保管の際の注意点を理解しておきましょう。暮らしを豊かにしてくれる優しい風合いが魅力のリネン、何年も使用できる素材だからこそ大切にしたいものです。日々の取り扱いのちょっとした心がけ一つで、リネンの美しさや優しさが維持できて、何年たっても長く楽しむことができるでしょう。