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リネンができるまで〜リネンの素材である亜麻とは〜

普段リネンを身に着けたり生活で利用するシーンは意外と多いかもしれません。ホテルに宿泊したときのベッドシーツ、レストランで食事するときのテーブルクロス、普段から身につけるリネンシャツなどなど、登場シーンを数えたらきりのない「リネン」という繊維素材ですが、その素材がどんなものかご存知でしょうか。リネンの素材は亜麻(フラックス)という植物の茎の部分です。今回はこの亜麻(フラックス)に焦点を当てて見たいと思います。

リネンの素材である亜麻とは?

リネンは、植物からとれる繊維の総称である”麻”を代表する天然素材です。「最古の繊維」と呼ばれ、古代から利用されてきました。リネンを作る植物である亜麻は寒冷地で育ち、日本でも栽培されています。まず、日本と海外の亜麻についてご紹介しましょう。

日本では亜麻と呼ばれている

私たちはリネンという言葉にとても親しみを感じます。流行りすたりがなく、いつの時代も多くの人に使用されているからではないでしょうか。しかし亜麻やフラックスと言われるとピンと来ないかもしれません。

亜麻(フラックス)は、亜麻科に属する一年草です。亜麻の茎の部分から繊維を抽出してリネンへと加工していく訳ですが、紡績を得て糸になった段階で「リネン」と呼ばれます。

リネンの主な生産地は?

パリに拠点のある「ヨーロッパリネン連盟」によると、リネンの生産高はヨーロッパが90%以上を占めています。

特に、フランス北部からベルギー西部とオランダ南部を含むフランダース地方には伝統的に生産地が集中しています。他には、ロシアや中国が有名で、現在日本でのリネンの輸入元は多くが中国です。栽培には寒冷地が適しており、毎年同じ土地で連作すると収穫量が減り品質が低下するので、3?5年の輪作が必要なため広大な土地が確保できる方が効率よく栽培できます。広大な土地を利用し、機械化を取り入れた農業によって効率的に栽培されています。ヨーロッパでは伝統的にリネンを使う文化があり、古くはリネン製品一式を嫁入り道具とするような文化もありました。ヨーロッパでは栽培地や生産地によってリネンの品質をブランドとして捉える傾向もあり、フレンチリネンやアイリッシュリネン等と呼ばれ高付加価値で取引されるリネンもあります。

日本に目を向けてみましょう。1874年、ロシアから送られた亜麻の種子が札幌で栽培され、日本におけるリネンの歴史が始まりました。その後、北海道全域で最盛期を迎えるものの、40年代の化学繊維普及により需要・生産が減少します。そして、2004年以降、リネンを北海道独自の作物にする目的により、当別町や十勝・上川地方で生産が復活させる動きがあります。

リネン以外にもある亜麻の用途

リネンというと、衣類やベッドリネンなど生地を使用したアイテムに目がいきがちです。しかし、亜麻の魅力はそれだけにとどまりません。さっそく、紹介してまいりましょう。

 亜麻の種を利用した亜麻仁油の健康効果

数々のメディアで取り上げられているのが「亜麻仁油」です。この亜麻仁油は、亜麻の種から抽出される油です。未精製の亜麻仁油には、オメガ3、食物繊維、ポリフェノールの一種リグナンが豊富に含まれており、魚不足の現代人が摂りたい栄養成分が凝縮されています。特に、体内では作れない不飽和脂肪酸オメガ3系のa-リノレン酸が、亜麻仁油が注目されている最大のメリットと言えます。

亜麻仁油の健康効果には、血液をサラサラにし血栓ができるのを防止、血圧を下げる、腸の活動を活発にする、基礎代謝と新陳代謝アップ、骨粗しょう症を予防するなど多くがあり、さらに美肌効果、更年期障害の改善など美容効果も期待されます。熱に弱いため、栄養成分をしっかりとるためには、サラダや焼き魚にかけたり、スムージーに小さじ1杯混ぜたりと加熱せずに「生」で食べるのが最適です。

参考:亜麻仁油の効果・効能

 画材やペットの栄養補給にも

亜麻仁油の使い道は、食べることにとどまりません。

酸素を取り込んで固まる「乾性油」の特性を活かし、亜麻仁油が油絵具に使われています。顔料と乾性油である亜麻仁油を練ったものが油絵具になりますが、絵の具のなかの亜麻仁油が酸素を取り込み顔料を定着させるのです。同時に、光沢と透明感を与えます。

人間の健康生活を応援する亜麻仁油ですが、家族の一員・ペットのための商品も人気です。特に犬と猫の栄養補完食として、エサに混ぜる亜麻仁油、粉末の亜麻仁油などがあり、市販のペットフードでは不足しがちなa-リノレン酸を摂取させ、ペットの健康に配慮することができます。可愛いペットの健康のために、体によいものを取り入れたてあげたいと思うオーナーに亜麻仁油は嬉しい商品です。(なお、使い方・使用容量は、パッケージの説明をきちんと読むことに配慮ください)

儚い亜麻の花

最後に、亜麻の美しい花をご紹介しましょう。日本の亜麻は、北海道のいくつかの場所で栽培されていますが、札幌から約25kmの北海道・当別町で栽培されている場所では、6月下旬から7月上旬まで、直径2.5cmほどの可憐な薄紫の花をつけます。

当別町により毎年開催の「当別亜麻まつり」では、亜麻の花を楽しんだり、リネン採取や糸紡ぎ実演など、リネンに関連した体験ができるイベントとなっています。亜麻畑一面に咲く花が満開になると、ラベンダー畑のように圧巻の風景となります。

しかし、亜麻の花を見るにはちょっと気をつけなければいけないことがあります。花は早朝から咲き始め午前中は咲いているものの、当日開花した花は午後になると全て散ってしまうのです。多くの人が儚い亜麻の花を見るために、当別町を訪れます。当別町観光協会によるリネン商品の販売、亜麻の実を使った食品のブースなどもあり、亜麻の花々やリネンと触れ合う1日を楽しめます。

参考:北海道で亜麻栽培が続いているところ

まとめ

リネンの素材である亜麻は普段あまり意識することがないような素材かもしれませんし、おそらくほとんどの人がその植物を目にしたことは無いのではないでしょうか。しかしその可憐は花や亜麻の種から取れる油など、多くの魅力に富む植物です。亜麻は古くから人類の歴史を支えてきました。日本でも北海道を中心に栽培された歴史が有りましたが、今は輸入の価格が安いリネン製品に押され、栽培があまりされなくなっているのも事実です。付加価値の高いと言われるアイリッシュリネンやフレンチリネンのように北海道のリネンも世界に誇れる素材となれる未来があっても面白いのではないでしょうか。是非亜麻に関する商品や情報にふれる折には、遠く北海道やヨーロッパの亜麻の植物に思いを馳せてみてください。

参考: リネンができるまで:フラックス(亜麻)加工の加工から生地ができるまで