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アンティークリネンの楽しみ方

ヨーロッパで古くから親しまれているリネン。質の高いリネンほど柔らかくしなやかで、使い続けることでカシミヤのような風合いが生まれていきます。またヨーロッパでは嫁入り道具の一つでもありました。シーツやクロスなどは大切受け継がれ、現代ではアンティークリネンとしてコレクションされています。この記事では、そんなアンティークリネンの歴史や楽しみ方についてご紹介してきます。

アンティークリネンとは

使い込むほど美しさが増すリネンの風合いは時代を越えても変わらずアンティークと称され、愛されています。ヨーロッパではリネンは長く愛用できる製品として、母から子へと受け継がれていくものであったと言います。長く受け継がれる間に、そのリネン製品の持つデザインや風合いは現代の人々にとって「アンティーク」と評され、実用性の高いリネン製品とは別の意味で芸術的な価値を纏う存在になりました。アンティークリネンは人とリネンの長い歴史が生み出した芸術品と言えるでしょう。

アンティークリネンと歴史

1920年頃まで作られた生地やインテリア、ウエアを指すのがアンティークリネン。なかでも真っ白なリネンは高い技術により生み出され、王族や貴族など、限られた人たちだけが持つことができました。

クロスやシーツには刺繍でイニシャルを入れたものもあり、アンティーク生地では人気のポイントのひとつとなっています。装飾文字は時代や国で異なり、これまで大切に扱われてきたリネンの時間に想いを馳せたくなるような存在感も魅力です。時代を超えても変わらない上品さがあるリネンの風合いはもちろんですが、ウエアとなればその時代の高いデザイン性も相まって、現在でも愛され続けている理由なのです。

フランスでは古くからリネンの文化があり、ディッシュクロスやシーツなどの生活用品から、アンダードレスや下着などすべてのものにリネンが使われていました。フランス語でリネンを指す「ランジュ(Linge)」はランジェリーの語源とされており、肌に直接触れても心地よい素材であることがわかります。また真っ白で高密度のリネンを持つことは富の象徴とされ、宝石と同等のように扱われていました。現在流通しているものは貴族たちの愛用品も多く、100年以上の時を経ても変わらぬ美しさがあります。

参考: 世界でのリネンの歴史 古代から中世まで

アンティークリネンの代表的な商品

もっとも古くから愛されてきた繊維「リネン」、気軽にライフスタイルに取り組むことができます。

ワンピース

手編みのレースや刺繍、ミルクガラスのボタンなど、アンティークの魅力をぎゅっと詰め込んだワンピース。当時アンダードレスやナイティ(女性の寝間着)として使われていたものが多く流通しています。

全てがハンドメイドであり、デザインも装飾も手の込んだものが多くまるで芸術品。もちろん中には補修跡もあるものもありますが、現代まで大切に渡ってきた歴史を物語ってくれます。胸元や袖、足元の贅沢なフリルがついたものや、透け感のあるものは、レイヤードスタイルでタウンウエアとしてコーディネートしてみてはいかがでしょうか。

アンティークリネンのバッグ

どんなスタイルにもコーディネートしやすいのがリネンカラーの特徴。リネンバッグは、アンティークリネン生地のリメイク品やハンドメイド品として手に入れる事ができます。

寝具として使用されていた生地は、繰り返し洗うことで生まれる、とろりとした肌触りが楽しめ、クロスのリメイク品はステッチやイニシャルの刺繍を活かしたデザインしたものもあります。またアンティーク時代のものはホームスパンも多く、織り目や節などが一枚一枚違うのが特徴。色や質感だけでなく、ネップ感やスラブ、生地の厚みなどそれぞれに個性があるのも楽しさのひとつです。

アンティークリネンのシーツ

繰り返し洗濯することで、柔らかくしなやかになるリネン。それだけでも十分な気持ちよさがありますが、繊維が細く密度が高いためシャリ感があり、夏は清涼感たっぷり。冬はというと、リネンには一度温まった熱が逃げにくいという繊維構造があるため、暖かく過ごすことができます。

熱伝導が良く、肌に触れた瞬間にすっと温度が馴染むリネンは、通年快適な眠りを約束してくれるのです。もちろんアンティークリネンならではの美しい装いは、アッパーシーツとしてもおすすめ。上品な光沢と、清潔な白さを保つリネンをふんわりとかければ、部屋の雰囲気をガラリと変えてくれます。大きな生地として残っていることが多いので、ワンピースや小物類のリメイク品として使用してもいいですね。

アンティークリネンのテーブルクロス

アンティークリネンのテーブルクロスはなんと言っても贅沢な装飾が魅力。

ハリのあるリネン生地に、繊細な手編みレースや刺繍が丁寧に施されたものが多く、大変気品があります。リネンは汚れが浸透しにくい構造のため、たとえアンティークだとしても真っ白な生地のままで残っているのです。

またイメージを変え、刺繍のサンプラーを使ってみるのもおすすめ。粗野感あるナチュラルな生地にクロスステッチや花文字でひと針ひと針アルファベットやモチーフを描いた布はテーブルやラックなどのワンポイントなります。またウェアやバッグなどのリメイク用としても人気が高く、刺繍やフリル部分を活かし、また新たな装いで生まれ変わって行きます。

アンティークリネンの手入れの方法

古い生地でもお洗濯が可能です。正しいお洗濯でこれからも長くリネンを楽しみましょう。

アンティークリネンのお手入れ

リネンはその細く繊細な見た目とは裏腹に、コットンやウールに比べ倍以上の強度があります。また濡れることにより、更に強度が60%増すのです。そのためたとえ古い生地だとしてもご自宅でお洗濯することは難しくないのです。

さらに通気性がよく速乾性に優れているので、生乾きのリスクが低く、雑菌の繁殖が少ないためいつでも清潔に着用できます。

シワになった場合には、霧吹きで水を一吹きしハンガーにかけておけば、自然とシワが伸びていきます。また敢えて素朴に洗いざらし・ノンアイロンで楽しむのも良いですね。

アンティークリネンは洗濯できる?

アンティークリネンはその他の衣服同様に洗濯ができます。デッドストックなどの糊や灰汁がついた未使用品は、はじめに別洗いするのがおすすめです。その後はネットに入れ洗濯機で洗っても大丈夫です。

繊細なレースやかぎ針編み、刺繍があるものは糸切れが起きやすので、優しく手洗いしましょう。リネンはブロック状に繋がれた繊維構造のために、汚れが滲みにくい特徴がありますが、うっかりコーヒーや紅茶をこぼしてしまい、シミを作ってしまった場合には、熱湯をかけてもみ洗いしてみてください。お醤油やソースは20~30分石鹸水に浸してから汚れた部分をもみ洗い、口紅やインクの汚れは濃い石鹸水でもみ洗いするか、裏返してアルコールで叩いてみてください。血液は流水で速やかに。正しく対処すれば、これからももっと長く愛用できますよ。

参考:リネン製品の保管方法

まとめ

中世時代は高価なものとして扱われていたため、贅沢に装飾をあしらったものが多く、アンティークリネンはまるで芸術品。それでもリネンの洗濯のしやすさや速乾性、清潔感など、機能的な素材であるために、たとえ100年以上前のアンティークであったとしても、これからも十分に使うことができます。ですが中世の貴族たちが愛用し、美しく残ってきたアイテムはこれ以上増えることはありません。使えば使うほど、美しく輝き、そして優しい風合いに育ってゆくリネン。これまで大切に渡ってきたように、次の世代にまた受け継いでいきたいですね。

参考: 綿とリネンをあわせた「コットンリネン」