
柔らかく肌馴染みの良い、リネン生地。それがどのような繊維でできているかご存知ですか?実はリネン生地は亜麻という植物からとれた糸でできています。リネン生地に馴染みはあっても、亜麻という植物に馴染みのある方は少ないのではないでしょうか。そこでこの記事ではリネン生地の元となる亜麻の植物と、その育て方、繊維の取り方などをご紹介したいと思います。
亜麻という植物
亜麻とはアマ科の一年草でその栽培は古くから行われています。日本での栽培も古く、江戸時代には種を薬として使用するため栽培され、繊維としては明治から昭和初期にかけ北海道で広く生産されました。実は亜麻はリネン生地の元となる繊維がとれるだけでなく、食用油としても活用されています。そんな亜麻の植物についてと、亜麻から作られる亜麻糸についてまとめてみました。
亜麻の栽培
亜麻は毎年同じ土地で連作をすると、収穫量がってしまい品質の低下を招くため、6〜7年の輪作を行います。 種まきの頃は4月、7〜8月に抜き取って収穫となります。
茎はマッチの棒位の太さで、1m程まで育つと先端に可愛らしい青色の花を咲かせ、やがて収穫の時期になるとボール状の実をつけるのです。繊維は茎の表皮と木質部の間に束になり並んでいます。
亜麻から作られる亜麻糸
亜麻の植物の茎繊維から紡がれる糸を亜麻糸と呼びます。これがリネン生地の原料となります。
柔らかく上質な繊維で麻と間違われやすいですが、亜麻の方が柔らかく織り上げた際には通気性や吸湿性に優れ肌触りが良いことから、高級な衣類などに使用されます。
また、亜麻の糸は丈夫であることでも知られ、その強靭性から高級な衣類に仕立てられない質の悪い繊維もテントや帆布に使用されたといいます。その証拠に、大航海時代の帆布は亜麻から織られた布で作られていました。
亜麻の育て方と繊維の取り方を説明
亜麻の植物の原産地は中央アジアの乾燥地帯。丈夫な植物のため、乾燥に強いという利点はありますが、高温に弱いので暑さで枯れてしまいます。
ですから亜麻の植物を育てるのに向いているのは寒冷地で、世界の栽培地を見ると北海道札幌市よりも高緯度地方となっています。暑い地域での栽培には向いていないですが、育てる土は問わないため比較的育てやすい部類の植物です。
また、可愛らしい花を楽しむために亜麻を育てるのなら、肥沃な土の方が良いようです。この項目では、亜麻の植物の育て方と亜麻の糸となる繊維の取り方をご紹介します。
亜麻の育て方
種まきの時期は4月から。遅くとも5月半ばまで。それ以降でも花は咲きますが、背丈が低く育ちが悪くなります。深さが足りないと背丈が伸びた際に倒れてしまう恐れがあるため、最低でも15cmほどは耕してください。種を蒔く深さは1cmほど。それを2cm間隔くらいでばら蒔きにしましょう。種をまいたら上から土を被せます。種を巻いてから気候状態にもよりますが、3〜10日程で発芽します。
亜麻の植物は乾燥に強いため、基本的には水やりは必要ありませんが土がカラカラになっていて心配な場合は水をあげてください。
発芽してから1ヶ月半ほどで背丈が1mほどになります。2ヶ月もすると小さく青い花を咲かせます。日の出と共に花が咲き、昼過ぎには散るという可憐さ。もし花を長く楽しみたい場合は、花の咲き始めに追肥をしてみてください。種取り用の亜麻の場合は、種をまいてから約120日で実をつけますので、茎が黄色くなって鞘が茶色くなる頃がおすすめです。鞘の中には10個ほどの種が入っています。この種は乾燥させて保存しておくとまた翌年にまくことができます。繊維用の場合は緑色の実がたくさんついた頃が目安となります。抜き取りを行った亜麻は種を取ったあとで乾燥させます。
亜麻の繊維の取り方
8月末ぐらいまでに抜き取りした亜麻はまだ気温が高いうちに乾燥させ「どぶづけ」を行います。「どぶづけ」とは亜麻を水につけ茎を腐らせて中の繊維を取る方法です。長期間に渡り水につけてしまうと中の繊維までもろくなることがあるので、注意深く観察しながら行う必要があります。つける日数はつけた茎から軽く浮いた繊維を指でつまむと弓なりにはがれる頃を目安にします。どぶづけを行った亜麻は十分に水洗いを行いましょう。この水洗いの際にすすぎができていないと臭いが残ってしまうことも。繊維がバラバラになったり、からまらないよう、慎重に水洗いをしたら次は乾燥をさせます。
水気を絞った亜麻は天日干しで乾燥させます。野ざらしにせず、雨が降ったら屋根のある場所に取り込み、晴れた日だけ干すようにしましょう。
完全に乾燥すると亜麻の繊維は黄色がかった灰色になります。これがいわゆる「亜麻色」です。乾燥させた亜麻は、ローラーなどで圧をかけ茎を砕き、これをブラシで梳いて繊維取りを行います。繊維と茎が綺麗に分離できたら、亜麻用の糸つむぎ車で紡いで亜麻糸のできあがりです。これが織り上げられることで亜麻布となります。これが皆さんご存知のリネンですね。
参考:リネンができるまで:リネンの素材、フラックス(亜麻)とは
亜麻の植物からとれた繊維について、リネンは衣類から、小物にまで幅広く使用される生地です。肌触りが良く、使用を繰り返し洗濯するほどに柔らかく使いやすくなります。また、リネン製品は丈夫であることでも知られており、そのため長く愛用することが可能です。ここからは亜麻の繊維から作られるリネンについてのお話をしたいと思います。
まとめ
亜麻の繊維は亜麻の植物の茎からとることができます。亜麻は乾燥に強く丈夫な植物のため、土や水やりにこだわることなく育てることが可能です。亜麻の植物を水につけて乾燥させてから、繊維を取り出す作業を行い、亜麻の繊維はリネンの原料となり、皆さんの知るリネン製品へと姿変えるのです。リネンは身近な存在だと思いますが、その原料である亜麻とリネンへの道筋は意外と知らない方が多いのではないでしょうか。是非亜麻という言葉を見かけたら気にしてみてください。